<社説>訓練場で大規模伐採 ノグチゲラ脅かす愚行だ


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 沖縄防衛局は米軍北部訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設で、新たに大規模な樹木伐採を始めた。砂利などを運搬する工事用モノレールの敷設を取りやめ、トラックが通行できる全長1・5キロ、幅3メートルの運搬道路の建設に切り替えたためだ。

 建設現場を撮影した写真を見ると、直径数十センチの樹木がいくつも伐採されているのが分かる。森を大規模に切り開いており、生態系に影響を及ぼさないはずがない。
 防衛局は2007年の環境影響評価図書で「自然環境の保全に最大限配慮するとの観点で取り組み、さらなる環境保全のための措置を積極的に、適切に実施していく」と記した。
 そうであるならば、今回の伐採をどう説明するのか。防衛局は工事用モノレール敷設を道路建設に変更したことについて「全体の工期を加速するため、運搬能力の高い方を選んだ」と県に説明している。つまり防衛局は「自然環境の保全に最大限配慮する」との誓いをかなぐり捨て、工期短縮を最優先にすることにしたのだ。
 そもそも工事用モノレール敷設も7月20日に県に提出した環境影響評価検討図書で初めて示されており、当初の計画にはなかった。図書は大幅な工法変更があるとして県に提出した。工期を当初の1年1カ月から6カ月に大幅短縮するためだ。
 その後、防衛局はさらに工法を見直した。砂利運搬の規模を拡大するため、モノレール敷設を取り下げてトラック運搬へと舵(かじ)を切った。このため「下草刈りを行う程度」だった工事を樹木の大規模伐採へと激変させた。
 工期短縮には理由がある。3月から7月まではノグチゲラの営巣期に当たるため、工事を実施できない。このため防衛局は何としても来年2月までに工事を完了させようとしているのだ。
 ノグチゲラは直径20センチ以上の木に巣穴を作る。営巣期の工事を避けるために、営巣場所である樹木そのものを伐採する。愚かとしか言いようがない。最初からノグチゲラを保護する気持ちなどないのだろう。
 図書には近隣のG、H両地区周辺にノグチゲラの巣穴を29カ所確認したことも記している。営巣を保護するには工期短縮ではなく、ヘリパッド建設そのものを中止すべきだ。