<社説>9氏に琉球新報賞 県民励ます足跡に感謝


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 その功績は、沖縄の各分野の振興と発展に力を尽くしてきただけにとどまらない。それぞれの足跡が県民を励まし、物心両面で豊かさをもたらしてきたと言えよう。深く感謝したい。

 第52回琉球新報賞を受賞する9氏に共通するのは、心に響く言葉であり、前を見据えて努力し続ける姿勢である。
 経済・産業功労は2氏が受賞した。
 嘉手苅義男氏はオリオンビール代表取締役社長として、県外だけでなく海外へも幅広く事業を展開、新規事業も積極的に進めている。「不可能を可能にするのは、成功するまで続けるところにある」。その言葉の重みをかみ締めたい。
 湧川善充氏は「DIY(ドゥ・イット・ユアセルフ)」を県民に定着させたメイクマンの代表取締役会長を務める。「沖縄で本土より高い価格で売るわけにいかない」。そのこだわりが多くの支持を集め、今日のDIY隆盛を呼び込んだ。
 社会・教育功労の長濱文子氏は県なぎなた連盟設立時から会長を務める。「成長させるのは自分だという気概を持ってほしい」。選手も指導者もいない中から沖縄代表を数々の全国優勝に導いたリーダーの言葉は強い説得力がある。
 スポーツ振興功労の具志堅用高氏はWBA世界ライトフライ級のタイトルを13度防衛した。「カンムリワシ」の雄姿が日本復帰からまだ日の浅い沖縄を勇気づけた。「諦めなければ絶対に夢はかなう」と沖縄の若者を鼓舞する。
 文化・芸術功労の普久原恒勇氏は「芭蕉布」や「ゆうなの花」など約400曲を作り上げた。「どこかで口ずさんでくれるだけでうれしい」。謙虚さが心を癒やし、人々に愛される「普久原メロディー」を紡ぐ。
 琉球舞踊家の4氏は文化・芸術功労を同時受賞した。谷田嘉子氏は玉城流扇寿会家元、玉城節子氏は玉城流翔節会家元、玉城秀子氏は玉城流玉扇会二代目家元、金城美枝子氏は玉城流扇寿会家元といずれも琉球舞踊界の重鎮である。
 幼い頃から一緒に稽古に励み、研鑽し合い、琉球舞踊を世界に誇る芸術へと高めた功績は大きい。受賞を機に「さらに頑張っていきたい」と口をそろえ、後進の指導にも情熱を燃やす。
 9氏とも幾多の困難に直面したことだろう。目標に向かって挑戦するその姿勢に学びたい。