召集された特別国会で石破茂自民党総裁が第103代首相に選出され、第2次石破内閣が始動した。
首相指名選挙は衆院で30年ぶりに決選投票となり、少数与党内閣を象徴する船出となった。数の力に頼らず、どのように国会運営をしていくのかが注目される。政権と対峙(たいじ)する勢力たり得るのか、野党にも国民の厳しい目が向けられている。
政権にとっての急務は政治不信の払拭だ。自民党派閥の裏金事件でクローズアップされた政治とカネを巡る問題に有権者は厳しい審判を下した。石破首相には政治改革を断行するために他党との協力関係の構築など、リーダーシップを発揮してもらいたい。
補正予算の策定も急務である。能登半島の被災地に向けた支援も補正予算の焦点になる。解散前、石破内閣は国会審議を経ずに内閣で使途を決めることができる予備費を被災地に充てた。野党が補正予算による措置を求める中、衆院選日程を優先して国会審議は省かれた形だ。国会審議を通じて被災地支援の問題点をあぶり出し、被災者の求める支援の在り方について十分に論議する必要がある。
衆院小選挙区の沖縄県内の投票率は49・96%と過去最低を更新した。半数超の有権者が投票していない。全国的な低投票率で選ばれた国会議員や内閣の正統性が問われている。安定した国家運営どころか、民主主義の危機と言えよう。政治への信頼を取り戻すことができるのか、全国会議員に問われている。
自民党は政治資金規正法の再改正に向けた議論を始めた。石破首相も「率先して答えを出したい」と信頼回復に意欲を見せる。ただ、党内では企業・団体献金の禁止に消極的な声が多い。衆院選大敗の結果に真剣に向き合うのか本気度が問われている。
低投票率の原因は野党にもある。野党は今衆院選で政権交代を訴えた。有権者がこの訴えに応じて票を投じた選挙結果でもある。しかし、その求めに応える枠組みを固めきれなかった。首相指名選挙の決選投票で84票もの無効票が出たことは、野党間の協議が成立しなかったことの表れだ。国民に向き合うことができているのかは野党にも突きつけられている課題である。
石破首相は少数与党での国会運営について「ある意味、こういう状況は民主主義にとって望ましいことかもしれない」と述べた。「議論が精緻になる」とも加えた。審議が活性化するとの見立てであり、望むべき立法府の在り方だと言えよう。
与党は国民民主党との部分連合を模索しており、所得税を巡る「103万円の壁」やガソリン税軽減など議論が動き出す。日米地位協定の改定を打ち出した首相にとって、新たなトランプ政権との折衝も問われる。政策決定過程をつまびらかにし、国民に開かれた国会運営に徹してほしい。