<社説>21世紀ビジョン 弱者支える振興策確立を


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 沖縄振興策の質的充実をいかに図るか。全ての県民が豊かな生活を享受できる県づくりに向け、真摯(しんし)な議論と実践を重ねよう。

 「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に関する本紙の市町村長アンケートで、重要視される政策(三つ選択)として最多の24市町村長が「観光産業の推進」を挙げた。
 それに続くのが「教育・人材育成」(21市町村長)、「離島・過疎地域の振興」(18市町村長)、「子どもの貧困対策」(同)であった。いずれも、復帰後の振興策で見いだされた沖縄の可能性と積み残された課題を反映したものだ。
 4次にわたる沖縄振興開発計画に続き、2012年に県自ら策定した「21世紀ビジョン」の10年計画は本年度で折り返しを迎えた。残りの5年間で可能性をさらに伸ばしつつ、課題を克服していきたい。
 観光が沖縄の経済成長を牽引(けんいん)するリーディング産業との認識を県民は等しく共有している。近年の海外観光客の急増は沖縄観光のさらなる飛躍を期待させる要素だ。
 通訳や医療面など海外客受け入れ態勢の充実という新たな課題も見えてきた。「21世紀ビジョン」の残された期間で対応したい。
 経済、医療、福祉、教育など県民生活全般の活性化を支えるのは人材である。市町村長が人材育成を重視するのは当然だ。人づくりへの投資が一層求められる。
 復帰後の振興策の中で離島・過疎地域の振興は常に懸案となってきた。全県的に社会資本整備は進んだが、所得や暮らしやすさの面で中南部と北部・離島地域との格差は埋まっていない。沖縄振興の柱である「県土の均衡ある発展」を確たるものとすべきだ。
 子どもの貧困は復帰後の振興策の問題点やひずみを如実に表している。本土との格差是正、社会資本整備を軸とした政策展開の一方で、社会的弱者の救済が後回しにされてこなかったか。必要なのは弱者を温かく支える振興策の確立だ。
 アンケートは振興策と基地問題の「リンク論」についても聞いた。5人の首長が「リンクしている」と答え、その全員が「リンクすべきでない」と回答している。リンク論を公言する安倍政権の閣僚に対する批判の表れだ。
 米統治の弊害は今も残ったままだ。それを克服しないまま、新基地建設と振興策をリンクさせるような動きを許してはならない。