<社説>失業率3%台 「使い捨て」では発展が滞る


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 8月の県内失業率が3・9%となり、23年ぶりの3%台となった。仕事を探す人に何件の求人があるかを示す有効求人倍率も1・00倍で、3カ月連続の1倍台だ。かつて沖縄の失業率は全国の約2倍という状態が続いていたが、全国は3・1%で、その差は確実に縮まっている。雇用改善の指標として、まずは歓迎したい。

 改善の要因は好調な観光業やIT(情報技術)関連業を中心に雇用が拡大していることだ。
 新規求人倍率を職業別にみると、福祉関連の2・30倍に次いでサービス2・01倍となった。IT関連は1・63倍、運搬・清掃が1・70倍、専門的・技術的職業が1・87倍、輸送・機械運転が1・43倍など、軒並み求職よりも求人の方が多い1倍を超えた。
 沖縄経済は好調だ。8月の入域観光客は92万6900人と単月で初めて90万人を超えた。国内外の空路拡充に加え、クルーズ船の寄港も増えた。観光客増がホテルや土産、飲食、小売りなどさまざまな業界に波及していることが分かる。
 IT関連業も2015年の生産額が4099億と初めて4千億円台を突破し、雇用も02年の4899人から15年は2万6627人と5倍超に拡大した。
 問題は雇用の質だ。失業率と同日に発表された、学生アルバイトの実態調査が労働環境の悪さを端的に現す。学生の40・5%が「契約以上の長時間労働」や「一方的なシフト変更」など不当な扱いを経験し、4人に1人が「学業に支障を来した」と回答した。
 10月から714円に引き上げられたとはいえ、県内の最低賃金は全国で最も低い。県の15年の調査では、直近1年間の採用者のうち、80・1%を非正規社員が占めるなど、不安定な雇用形態が圧倒的に多い。特にリーディング産業である観光関連や、飲食で非正規率が9割超となるなど、好況が安定雇用に結び付いていない。
 新規求職申し込みの状況を見ると、職に就いている人が新たな職を探す傾向も強まっている。今の仕事より条件の良い職を求める人が増え、人材流出がさらなる人手不足を生むという悪循環も懸念される。
 どんな業種でも人材の「使い捨て」では新たな発想は生まれず、技術は引き継がれず、いずれ事業は滞る。雇用の質の改善が県経済の発展につながるよう、官民挙げた取り組みが必要だ。