<社説>大阪沖縄県人会70年 文化を核に「異和共生」を


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 大阪沖縄県人会連合会の創立70年を記念した琉球新報移動編集局フォーラム「沖縄文化が育む絆-大阪沖縄県人の歩み」が、大阪市大正区で催された。

 戦後の苦難を乗り越えてきた大阪の県人社会の中で、ウチナーンチュの誇りを紡ぎ出し、結束を強める土台に沖縄芸能が大きな力を発揮している。フォーラムでは沖縄文化の普遍的価値を再確認し、県人会をさらに発展させる提言と決意が示された。
 会場一体となった濃密な議論の中で「異和共生」というキーワードが見いだされた。人々を包み込む沖縄文化の力で県人の絆を深めつつ、地域社会ともつながり合う方向性が照らし出された。
 「ソフトパワーとしての沖縄芸能」のテーマで基調講演した、高良倉吉前副知事は「戦後の苦労を乗り越え、高い水準の沖縄芸能を輝かせている」と述べ、大阪に息づく沖縄芸能の力を評価した。
 その上で、高良氏は県外、国外をにらんだ県の文化戦略の強化を求めた。沖縄芸能の魅力を世界に幅広く発信して共鳴する人を増やし、その地で認識を深めた県系人の結束も強める。相乗効果を意識した、示唆に富む提言である。
 2世、3世の割合が増し、県人会の会員数は減少傾向にある。歯止めを掛ける方策について、嘉手川重義連合会長は、沖縄に思いを寄せる県出身者以外の府民にも加入資格を広げる構想を打ち出した。より良き方向性を模索してほしい。
 エイサー祭りの開催など、活発な活動で知られる大正沖縄県人会の仲村隆男会長は「沖縄県人の相互扶助が最優先され閉鎖的だった活動から、変化している」と報告し、「大正区の発展に貢献したい」と力強く決意を語った。
 沖縄出身者が約4分の1を占める大正区で、沖縄文化を積極的に街づくりに取り入れている筋原章博区長は「異和共生」を説いた。
 筋原氏は、県出身者とそれ以外の区民の壁を取り払い、相互理解と相互尊重を深めることに腐心してきた。違いを認め合い共にできることを探し合う。異なったままで和やかに共に生きる-。「異和共生」の理念は、大阪の地で県人社会が一層発展する方向性を示していよう。大正沖縄県人会と大正区の緊密な連携はその道しるべとなるはずだ。
 ユイマール精神による助け合いで、大阪の県人社会の強固な基盤を築いた先達に敬意を表したい。