<社説>宮古島陸自配備 情報開示し市民判断仰げ


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 宮古島市への陸上自衛隊ミサイル部隊の配備計画で、防衛省が配備候補地を示す前に下地敏彦市長がゴルフ場「千代田カントリー」の活用を提案した経緯が市議会答弁で明らかになった。

 議会答弁によると市長は、防衛省関係者と面談を重ね、「千代田」について問われたのに対し「利便性がいいのではないか」と答えたという。
 市長はこれまでの市議会で、千代田の活用を提案したことはない、と否定していた。議会での虚偽答弁と批判されても仕方がない。
 市長は「公式の場ではなかった」と抗弁したが、やりとりが2015年2月に市長室で行われたことも明らかになった。本紙記者の取材に「予算説明の公務の後、雑談の中で千代田の話が出た」としているが、市長室という公務の場であり、事の重大性からしても「雑談」で済まされる話ではない。
 市長室でのやりとり後の同年5月、防衛省は陸自警備部隊、ミサイル部隊の候補地として千代田と大福牧場を市長に提示した。
 市長が千代田に言及したことが防衛省に受け入れ容認と受け取られ、候補地絞り込みにも影響を与えた可能性を否定できない。
 宮古島には航空自衛隊のレーダーサイトがあるが、地対艦、地対空ミサイルの運用部隊が新規配備される予定だ。重火器装備の実力部隊であるミサイル部隊が新たに配備されるのである。多くの市民が「戦争に巻き込まれかねない」と不安視するのも当然だ。
 市長は陸自警備部隊の配備計画に対し当初から「島嶼(とうしょ)防衛は重要」とする見解を示していた。宮古の自衛隊協力会会長も務めた市長の思想信条からすれば、宮古島へのミサイル部隊配備も必要との認識かもしれない。
 しかし市民や議会に賛否がある中では、防衛省と内々の交渉ではなく、情報開示を働き掛け幅広い議論を喚起するべきだった。
 市長は6月市議会で「陸自配備を了解する」と表明、議会も配備を求める陳情を与党の賛成多数で採択した。しかし地元の野原部落会は3月に反対決議をし、2日の説明会でも「白紙撤回」の声が噴出した。
 ミサイル部隊配備の一方で、一体となる弾薬庫の計画、場所は不明なままだ。議会が意見書を可決した「配備計画の全体像を明示」する情報開示と共に、市民に賛否を問う住民投票を行うべきだ。