<社説>パリ協定発効へ 最優先で審議し批准急げ


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 いよいよ大気中に温室効果ガスを出さない「脱炭素」時代への転換が始まる。

 国連は地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」が11月4日に発効すると発表した。
 伊勢志摩サミットの議長国として協定の早期批准を各国に呼び掛けたにもかかわらす、日本はまだ批准していない。あまりにも無責任だ。批准案の国会審議を急ぎ、協定の早期批准を強く求める。
 パリ協定は昨年12月、フランスのパリで開かれた気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された。途上国を含む全ての国が、産業革命前からの気温上昇幅を2度未満とする目標を掲げた。そのために各国が温室効果ガスの排出量を減らすことに取り組むと約束した。
 パリ協定が発効するには、55カ国以上の批准と、批准した国々が出すガスの量が世界の排出量の55%以上を占める必要がある。2大排出国の中国と米国が批准を共同発表、早期発効の流れをつくった。その後世界4位のインドが批准手続きを完了した。EUも国連に批准書を提出した。こうして採択から10カ月で発効要件をクリアした。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化により海面は今世紀末までに最大82センチ上昇すると予測している。地球全体の気温上昇を2度未満にとどめるため、2100年時点でCO2を含む温室効果ガス濃度を450ppmに抑える必要があるとしている。うちCO2は約420ppmが上限値で、現在のペースで増加すれば今後10年程度で突破すると見込まれている。こうした最新の科学の知見が、各国をパリ協定批准に向かわせた。
 気象庁は今年5月、15年のCO2濃度の年平均値が国内で観測している3地点全てで400ppmを突破し、いずれも過去最高を記録したと発表した。このうち1カ所は与那国島だ。沖縄を含め、日本全体が危機感を持たなければならない。
 日本は批准案の国会審議を週明けにも始めるが、環太平洋連携協定(TPP)を巡る与野党攻防のあおりで批准が遅れそうだ。協定発効後は、協定の実施ルール作りに移る。批准が遅れルール作りに間に合わなければ、日本に不利な内容になる可能性もある。大排出国として日本は国際社会に責任を果たさなければならない。