<社説>参院選違憲状態 抜本改革は待ったなしだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 選挙制度改革が小手先にとどまり、選挙権の平等が軽んじられていると指弾する司法の警告である。

 「1票の格差」が最大3・08倍だった7月の参院選は憲法違反だとして、弁護士らが選挙無効を求めて全国で一斉提訴した裁判の初めての判決で、広島高裁岡山支部は「違憲状態」との判断を示した。
 2010年(最大格差5・00倍)、13年(同4・77倍)の参院選についても、最高裁は「違憲状態」として、都道府県単位の区割り変更による是正を求めていた。
 国会は、全国を11ブロックに分けた選挙区制移行などを議論したが、自民党主導で人口が少ない隣県を1選挙区とする「合区」を「島根・鳥取」「高知・徳島」で導入するにとどまった。1票の格差は縮まったが、それでも3倍を超えたことの是非が問われた。
 松本清隆裁判長は「3倍超の格差を残しており、著しい不平等状態の解消には不十分」と断じた。抜本的な改革を促す判決である。
 11月にかけて全国で16件の判決が出そろう。厳しい判決が相次ぐことが確実だ。選挙制度改革は文字通り待ったなしとなろう。
 合区などの格差縮小の努力には一定の評価を与えた判決は「違憲」とは見なさず、「選挙無効」は退けた。だが、依然3倍超の格差が温存されていることに対し、「投票価値の平等の要請を満たすとの評価は困難」と指摘した。
 「合区」推進を求めたようにも映る判決だが、懸念も拭えない。参院の議席は人口の少ない県にも2議席が配分されてきたが、大都市圏への人口集中が進み、1票の格差はさらに広がりかねない。
 今回の参院選の二つの「合区」では、島根を除く3県で投票率が過去最低を記録した。有権者の関心の低下を招いたからだ。特定の地域が照準となる合区増に突き進めば、地方の声が政治に反映されない悪循環に陥る恐れがある。人口減にあえぐ地方の民意を埋没させてはならない。
 一方、自民党内に選挙制度改革を憲法改正の入り口とする論がある。都道府県から最低1人の議員が選出されるよう改める案だが、改憲のために選挙制度改革を利用するのは本末転倒ではないか。
 参院が果たすべき役割を見詰め直し、1票の価値の平等確保と、中央政治に地方の声をしっかり届ける改革を両立せねばならない。各政党の本気度が厳しく問われる。