<社説>世界県人大会 「湧き出る思い」に応えよう 絆深め、人的財産の発展を


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 東京で熱心に県人会活動をするウチナーンチュ2世に聞いたことがある。なぜ沖縄にこだわるのかと。

 東京生まれで沖縄に住んだことは一度もない。若いころはロック歌手を目指し、沖縄への関心はなかった。40歳を過ぎて空手や琉球古典音楽を学ぶ。「体の中から湧き出る、沖縄を欲する気持ちを抑えることができない。自分でもなぜか分からない」と答えた。
 国内外から続々と集まる8千人近い人たちも身の内から湧き出る思いを味わっていることだろう。

若者が連携の力に

 26日の前夜祭を皮切りに30日まで第6回世界のウチナーンチュ大会が開かれる。那覇空港には国も言葉も違う「ウチナーンチュ」たちが沖縄入りしている。
 まずは「お帰りなさい」と歓迎したい。
 県によると、今大会の参加者は1万5600人で過去最高だ。海外参加者が26カ国・2地域から7200人、国内招待者が600人、国内と県内の一般客が7800人だという。
 1889年に県人初の米国移民がカナダ経由で米本土へ渡り、1900年には「沖縄移民の父」といわれる當山久三氏のあっせんで送り出された県人がハワイに到着した。
 120年以上の月日が流れ、ウチナーンチュは世界各国で根を張り、活躍している。世代を重ね、5世も生まれている。その一方で、沖縄への愛着は薄まっているのではないかとも思われた。
 実際、第4回大会はウチナーンチュネットワークの拡充・深化がテーマであったし、第5回大会は若者ら次世代への継承がキーワードであった。移民1世が減る中で、ウチナーンチュの絆が将来に続くのか、懸念もあった。
 しかし今大会の海外参加者は前回の5317人を大幅に上回る。特に若い世代の参加者が目立つ。
 大会に先立ち20日から開かれた若者ウチナーンチュ大会には4日間で延べ2千人が参加し、沖縄にルーツを持つ海外の若者と沖縄に住む若者が沖縄の未来を熱く語り合った。
 玉元三奈美実行委員長は「若者同士が国を超えて連携し、新たな取り組みが生まれる可能性に期待している」と語った。ウチナーンチュの絆は世代を超えて強まっている。
 情報通信技術の発達で世界各国と即座につながることができる時代だ。距離や言語の壁を越え、この若者たちが沖縄を中心にして文化やビジネスを生み、伝え、発展させてくれるのではないか。わくわくする思いだ。

うちなーぐち復活を

 県人のネットワークをビジネスにつなげる試みは世界ウチナーンチュ・ビジネス・ネットワーク(WUB)があり、26日には第20回となる世界大会が行われる。絆の力は着々と生かされている。
 世界のウチナーンチュを迎え入れる私たちは、共通のルーツを持つ人々のネットワークを人的財産として絆の力をますます発展させなければならない。
 さらに世界中の県人が「湧き出る思い」で求める沖縄の伝統文化を守り、文化の源である言語、うちなーぐち(沖縄言葉)を復活させていきたい。
 移民した県人とその子孫は、未開地の開墾、厳しい労働契約、差別、戦争など幾多の困難に遭った。近年、世界に活躍の場を求めた県人も言葉や文化の壁に戸惑ったことだろう。
 しかし県人は歌三線や琉舞、空手など沖縄の伝統文化を心のよすがとし、ウチナーンチュの誇りを保ち続けて今、5年ぶりに沖縄に集結した。その心意気を沖縄に住む私たちも共有し、大切にしたい。
 26日に那覇市の国際通りで行われる前夜祭パレードから、30日に沖縄セルラースタジアムで開かれる閉会式まで、私たちが参加できるイベントが盛りだくさんだ。交流し、絆を深め、「湧き出る思い」の源を見つめ直したい。