<社説>学校問題行動調査 解決できる体制つくろう


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 文部科学省が公表した2015年度問題行動調査で、県内小中高校、特別支援学校のいじめ認知件数は前年度の1029件から2335件に倍増した。国の指導などにより、いじめを早期に発見し、解決につなげようという意識が教職員に徹底された結果だ。

 いじめ問題では、全国的に生徒の自殺といった衝撃的な事象が起きた直後こそ関心が高まり認知件数が増えるが、時間がたつにつれ関心が薄れる。
 今回の結果は潜在的ないじめを表に出したという点では評価したい。今後はいじめを根絶するまで、関心を途切れさせることなく、教職員を含めた大人が問題解決に導く体制をつくれるかが鍵だ。
 県内のいじめ認知件数は09~11年度まで300件前後で推移した。12年度に3560件と急増したのは、11年に滋賀県で中2男子がいじめで自殺した件が影響し、問題の掘り起こしが進んだ結果とみられる。13年度に500件台に減り、14年度から再び急増したのは13年のいじめ防止対策推進法施行、15年の岩手県での中2男子生徒いじめ自殺が影響したからだろう。
 統計結果から、いじめはどの時点でも潜在的に発生していると言える。顕在化させるのは、大人の関わりの度合いによるとも言える。
 課題は、いじめが「解消している」との回答が県内は81・6%で全国平均の88・6%を下回り、「継続支援中」が16・2%で全国平均の9・2%を上回ることだ。県は丁寧に向き合っている結果と前向きに受け止めている。
 だがいじめなどの問題は一刻も早く解決することが肝要だ。教員の多忙化が指摘される中、教員以外にも支援に関わる人材を増やす必要はないか、心理学などの専門家を現場に増員できないか検討してもらいたい。
 問題行動調査では、ほかにも小中学校の不登校が最多となり、経済的理由による長期欠席者が14年度の1人から9人に増えるなど多くの課題が指摘されている。
 日本国憲法は全ての国民が教育を受ける権利を有し、保護者は「子女に教育を受けさせる義務」を負うとしている。
 経済的に学校に行けない、行くことで心身を脅かされる子どもたちを含め、全ての子どもの学ぶ権利を保障するのが、大人に課せられた義務だ。いじめなどの課題に対して、継続的な支援・解決体制の構築へ知恵を結集したい。