<社説>世界空手県勢2冠 県民に誇りもたらす快挙だ


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 オーストリアで開かれた空手の最高峰の大会である世界選手権で、空手発祥地・沖縄で鍛錬を積んだ技がいかんなく発揮された。

 男子個人形で喜友名諒選手が2連覇を達成し、金城新、上村拓也の両選手を加えた団体形の日本チームが初出場で初優勝を飾った。
 個人、団体ともに空手の聖地沖縄の名を世界にとどろかせ、県民に勇気と誇りをもたらした。快挙を喜びたい。
 3選手とも劉衛流龍鳳会に所属する。世界的指導者である会長の佐久本嗣男氏の厳しい指導を受け、365日けいこに明け暮れる日々を送っている。
 技の熟度に満足することなく、心技体を充実させ続けている3選手の奮闘を心からたたえたい。
 世界を制する弟子を指導する佐久本氏の存在は大きく、敬意を表したい。1984年から世界空手道選手権3連覇を達成した同氏は世界の強豪との戦い方を熟知している。10月に那覇市で開かれた世界プレミアリーグで個人、形の2冠を達成した喜友名選手が岩手国体個人形で準優勝に終わった際、佐久本氏は「心と体が一致していない」と奮起を促していた。
 喜友名選手は短期間で課題を克服し、佐久本氏が「力の抜き差しと粘り、無駄な動きのない武道の本質を見事に演武した」と評価した出来で、見事に2冠を獲得した。
 団体は決勝まで劉衛流最高峰の形「アーナン」を繰り出し、全試合を5-0で勝ち抜く圧勝ぶりだった。集中力を極限まで高め、空気を切り裂く気合を響かせ、危険を伴う急所への突きや蹴りの寸止めの精度がすごみを増した。
 空手の個人形は2020年東京五輪の正式種目となっている。喜友名選手を筆頭に、3選手は個人でもトップクラスの力がある。
 東京五輪という大きな目標に向け、一層の鍛錬を積んで県勢の出場をつかみ取ってほしい。それは県内の青少年に夢を与える。
 選手の活躍だけでなく、沖縄空手界が今、躍動している。
 先月の「空手の日記念演武祭」で3973人による一斉演武があり、ギネス世界記録に認定された。世界のウチナーンチュ大会に関連して「空手・古武道交流演武祭」も催され、世界中から駆け付けた空手家が技を披露し、交流の輪を広げた。
 県勢の快挙と空手界の活況を、東京五輪の空手競技会場の沖縄誘致にも結び付けたい。