<社説>泡盛製造3割赤字 低迷脱却へ経営基盤強化を


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 わしたシマの酒が危機にある。県酒造組合が初めて公表した2014年度の県内の泡盛酒造所経営状況では、県内45社(休業1社)の3割に当たる15社が赤字となっている。営業利益が500万円以下の酒造所も12社で、6割もの酒造所が経営的に厳しい状況にある。

 公表された製造量では100キロリットル以下が21社と半数近くを占め、県内酒造所の多くは零細かつ、利益を上げられない経営構造にあるといえる。
 それぞれの地域に根付く泡盛が廃れることは避けねばならない。世界文化遺産登録を目指すに当たり、泡盛の品質や文化的側面だけでなく、多様性も一つの魅力になるからだ。戦前はそれぞれの蔵元に黒麹(こうじ)菌があり、蔵ごとに異なる味わいを醸し出したと伝えられる。小規模酒造所の危機は、多様性を失うことにもつながりかねない。文化的損失ともいえよう。
 零細酒造所に限らず、泡盛業界全体にとっても危機は目前にある。酒造組合が経営状況などを公表した背景には、復帰特別措置法に係る酒税軽減措置が2017年5月で期限切れを迎えることがある。
 りゅうぎん総合研究所などが泡盛製造業等振興策検討委員会に報告した分析では、酒税軽減措置が撤廃された場合、17年度の売り上げは全体で約12億円減少し、消費量は8・9%減ると試算された。
 11年連続で泡盛出荷量が減少する中、軽減措置が撤廃されれば、零細酒造所は価格に転嫁せざるを得ない。製造量の46・7%を占める上位3社も価格競争が激化すれば経営体力を奪われる。軽減措置の延長は沖縄の酒造業にとってまだ必要なのだ。
 泡盛衰退への危機感は生産者側だけでなく、消費者にもある。1日には県外や若者、女性への拡大を想定し、全国に発信する新泡盛カクテルが選定された。2日は飲食事業者有志による「1万人での同時乾杯」を目指すイベントが行われる。県民が応援していることを酒造各社は忘れないでほしい。
 低迷脱却には酒造組合を中心に経営の透明化や情報公開に積極的に取り組む必要がある。復帰特別措置があっても経営が苦しいのはなぜなのか、課題と改善策を明確に示さねば、軽減措置延長へ政府や県民の理解は得られまい。組合が打ち出した原料米の県内生産など重点施策を確実に遂行し、業界全体で経営基盤強化を図ってもらいたい。