<社説>韓国朴政権の危機 政治私物化の悪弊を断て


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 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が政権崩壊の危機に直面している。

 国政運営を巡る不正疑惑が深まり、最新支持率が5%に落ち込むなど、任期を1年3カ月残す中、政権基盤が一気に弱まっている。
 混迷の長期化は、北朝鮮の核・ミサイル開発への脅威など、不安定さを増す北東アジアの安全保障や、従軍慰安婦問題の解決に向け改善の兆しを見せていた日韓関係に影を落とす公算が大きくなっている。
 12月の日本開催で調整中だった日中韓首脳会談での初来日も見通せなくなってきた。日韓外交への影響を最小限に食い止めてほしい。
 朴大統領は、40年来の親しい友人である崔順実(チェスンシル)氏に北朝鮮との非公式接触や対日外交資料など大統領府の文書を渡し、助言を求めていた。韓国検察は崔氏と大統領府の元秘書官を逮捕し、朴氏は2度の謝罪会見を開き、捜査受け入れに追い込まれた。
 韓国政治史に刻まれる一大スキャンダルは、現職大統領が刑事事件で捜査を受ける前例なき異常事態に発展しそうだ。
 崔容疑者は大統領府にも顔パスで出入りしていた。政府の資料が頻繁に届けられ、崔容疑者は演説や高官人事、外遊時の服装まで大統領に助言していたとされる。
 さらに崔容疑者は大統領との関係を利用し、朴氏の指示を受けた秘書官を介して財界に寄付を強要して70億円を傘下の2財団に拠出させていた疑いも浮上している。
 朴大統領本人が疑惑の核心にいる構図である。韓国検察当局が崔容疑者と元秘書官を逮捕し、捜査を尽くすのは当然のことだ。
 機密漏えいに加え、政治経験がない一民間人に国政運営を依存していた実態は衝撃的だ。大統領に権限が集中し、政治が私物化されがちな韓国政治の病弊は深い。
 韓国の歴代大統領は本人や身内の不正が暴かれ、寂しい末路をたどってきた。全斗煥(チョンドゥファン)、盧泰愚(ノテウ)の両氏は逮捕され、盧武鉉(ノムヒョン)氏は捜査線上に上ったことを苦にし自殺した。
 身内を厚遇する悪弊を断つことを望んだ国民は、クリーンなイメージがあった朴氏を大統領に選んだ。裏切られた国民の怒りは強い。朴氏による独断的な首相交代などの人事で事は乗り切れそうにない。
 朴氏は全ての事実を明らかにし、国民の怒りと疑念に答えるべきだ。それしか、国民の負託に応える道は残されていないだろう。