<社説>地銀3行中間決算 マイナス金利を見直せ


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 お金を貸しても、もうけにつながらない。金融業界は違う次元に入ったことが、各地銀の9月中間連結決算から明らかになった。

 県内地銀3行は、マイナス金利の影響で貸出金に対する利息収入が減り、3行合計での経常利益が10・3%減の120億9100万円、中間純利益は34・7%も減り、85億8900万円となった。
 前年は増収増益だったことに比べれば、経営環境が著しく悪化したといえる。
 原因がマイナス金利にあるのは明らかだ。県内ではかつてない低金利時代を迎え、地銀3行の貸出約定平均金利は今年9月時点で1・658%となり、1年前から約0・2ポイント下がっている。今後も金利低下は続くとみられ、経営環境改善は見通せない状況だ。
 沖縄経済は好調局面にあり、資金需要は旺盛だ。それを裏付けるように、融資の総量は3行で約3兆2592億円と、前年比で6%増えている。マイナス金利は借りる側にとって恩恵をもたらしたのは確かだ。だが融資額は増えたものの、金利低下の影響で銀行が収益を上げるに至らないのが現実だ。
 各行とも金融商品開発や、地元企業の経営支援、事業の再生・継承といった分野に注力する姿勢を見せている。非金利面での競争が求められ、銀行自体の経営努力も問われよう。
 低金利時代にあって融資を受ける側にはまだまだ恩恵はあるだろうが、銀行経営が圧迫されれば、最終的には手数料の追加や預金金利の低下などのしわ寄せは顧客に来る。実際にゆうちょ銀行はマイナス金利の影響で収益が落ちたことを理由に、現金自動預払機(ATM)で無料だった一部の送金手数料を10月から有料に変更した。
 全国的にも複数の地銀が9月中間決算で減益となっている。いずれもマイナス金利による影響だ。
 マイナス金利導入の目的は、現金を日銀にとどめず、融資を増加させることで経済活性化を促すことにあった。
 低金利によって融資が促された面はあるが、それ以上に銀行経営の圧迫、預金金利の低下により消費を冷え込ませ、貯蓄に向かわせるなどの副作用ばかりが目立つ。
 導入から半年で、マイナス金利の効果がなかったことはほぼ証明された。アベノミクスという壮大な実験は失敗に終わった。日銀は一刻も早くマイナス金利をはじめとする政策見直しに着手すべきだ。