<社説>高齢受刑者再犯増 立ち直り支援の対策急げ


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 穏やかに齢(よわい)を重ね、分別が利き、犯罪とは縁遠い-。お年寄りに対するこうしたイメージが崩れつつあるのだろうか。

 2011年に刑務所を出て5年以内に再犯に至った65歳以上の高齢者を調べたところ、4割が半年以内に再び罪を犯していたことが16年の犯罪白書で分かった。再犯までの期間は高齢になるほど短くなっている。半年未満は29歳以下の21・8%に対し、65歳以上は40・2%だった。
 初犯を含めた高齢受刑者も増えている。14年に初めて1割を突破し、15年は10・7%に上った。15年の2313人は1996年の約4・5倍に当たり、右肩上がりで増えている。実情は深刻だ。
 高齢受刑者は出所しても仕事や住まいが見つからず、自立した生活を営むことが難しい。そのため、万引や窃盗など、比較的軽微な犯罪を繰り返し、刑務所に戻る人が多い傾向がある。
 出所後に働き先や住宅がない高齢者が生活保護を受けたり、身を寄せる場をあっせんするなど、福祉と連動して立ち直る機会を与える枠組みの整備を急ぎ、高齢受刑者の再犯を減らさねばならない。
 法務省と厚生労働省は2009年度から、各地の刑務所や「地域定着支援センター」と連携し、必要があれば、出所してすぐの受刑者を介護施設などに紹介する「特別調整」を実施している。
 13年度の利用者は299人、15年度は389人に増えたが、65歳以上の高齢出所者は2千人を超えており、現行の支援では限界がある。
 一般的に先進国の犯罪の年代別統計では、20歳代をピークに年齢を追うごとに減るが、日本の高齢受刑者の数や再犯率の高さは、世界的にも特殊な状況である。
 軽微な罪を犯した被告が実刑を科されないためには、被害弁済と身元引受人に加え、謝罪と反省が不可欠とされる。仕事もなく弁済できるお金もなく、身寄りも乏しい高齢者が再び犯罪に手を染め、刑務所を埋める悪循環にある。
 微罪であっても実刑を受ければ、受刑者の食費、看守の人件費などで1人当たり年間300万円以上の公費がかかるとされる。高齢化に拍車が掛かる中、刑務所が福祉施設の代わりを担う形になってはならない。
 社会を安定させ、予算の無駄を減らすためにも、高齢受刑者の増加と再犯率の高さに歯止めをかける具体的対策が急務だ。