<社説>海兵隊機重大事故率 危険な機体は沖縄飛ぶな


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 沖縄の空に安全は保障されているのか。疑問を抱かざるを得ない。

 米海軍安全センターによると、2016米会計年度(15年10月~16年9月)に米海兵隊所属航空機の10万飛行時間当たりの重大(クラスA)事故発生率が3・31件となり、2年連続で増加していることが分かった。
 クラスAは被害額が200万ドル以上や死者が発生した場合に該当し、9月22日に沖縄本島東沖で発生したAV8ハリアー戦闘攻撃機の墜落を含めた8件が対象となっている。
 問題は重大事故発生率が過去3番目に高いことだ。同センターが事故率を公表した02会計年度以降、最も高かったのはイラク戦争時の04年度で5・00件だった。
 ハリアー以外にも重大事故を起こしたFA18ホーネット戦闘攻撃機、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ、CH53E大型ヘリはいずれも沖縄に配備され、ないしは県外から飛来する航空機だ。
 運用上、民間機よりも危険な軍用機が、平時に県民の頭上を飛ぶ状態が果たして安全と言えるのか。さらに県民が不安に感じるのは、米軍自身の姿勢にもある。
 9月のハリアー墜落事故で、米軍は県民の飛行停止要求を無視し、墜落原因が明確でないのに約2週間で同型機の飛行を再開した。
 しかも飛行再開に当たり、ローレンス・ニコルソン四軍調整官は「安全に飛行できる確信を得て決心した」と言いながら「現在進行中の調査について言及できない」と根拠を示さなかった。
 これでは事故後に自粛していた訓練の遅れを取り戻すための方便と非難されても仕方あるまい。
 訓練不足は海兵隊トップも議会で認めている。ネラー海兵隊総司令官は、3月の下院公聴会で「訓練するための航空機が不十分だ」と強調したという。国防費の大幅削減が機体整備などの運用面に深刻な影響を及ぼしたという見方だ。
 沖縄では1972年の日本復帰後、47件の米軍機墜落事故が起きている。1年に1回以上の頻度だ。沖縄の空が安全・安心であったことは、この44年なかった。
 機体の安全性に疑問があるオスプレイだけでなく、多くのパイロット、航空機に練度不足や整備不良などの問題が潜んでいるのであれば、軍全体の構造を改革すべきだ。安全をもたらす努力をしない米軍に沖縄の空を飛ぶ資格はない。