<社説>自民税調始まる 沖縄の実情に合った制度を


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 自民党税制調査会(税調)の2017年度税制改正に向けた議論が始まった。沖縄関係では、本年度に期限を迎える酒税や航空機燃料税など9項目の税制について内閣府が県の要望を基に延長や拡充を求めている。

 しかし、今回は5年前とは様相が違う。9項目には適用実績がほとんどない税制もある。翁長県政に対する安倍政権の風当たりも強い中で、業界団体には政治が影響するとの懸念もある。
 税制は沖縄の産業や離島振興の支えになることが求められる制度だ。制度の存続とともに真に沖縄振興につながる改善策を議論してほしい。
 9項目で目玉となるのは「観光地形成促進地域制度」が宿泊施設を対象とするかだ。同制度はスポーツ・レクリエーションなどの観光施設を新・増設した場合に投資税額が控除される。しかし、これまでに法人税特例の適用は実績ゼロにとどまる。地方税は12~15年度に計7件だった。
 観光産業の中心で、投資需要も高いホテルなどの宿泊施設が対象に含まれていないことが利用低迷の一因だ。沖縄県の入域観光客数は伸び続けており、宿泊施設の追加は国内外からのホテル投資、既存ホテルの増設に弾みがつくはずだ。
 適用額が3年間で309億円と最も多い航空機燃料税軽減措置は、旅客機だけでなく那覇空港物流ハブ事業を受け貨物機にも対象を広げた。離島県沖縄で航空路線は重要なインフラだ。観光振興と路線の安定確保のためにも延長は不可欠だ。
 一方で、経済特区への企業誘致策としての優遇税制は活用が少ない。名護市の「経済金融活性化特別地区」は対象を金融業以外に広げ、要件も緩和したが、適用実績は国税分2件のみだ。
 酒税軽減措置の延長にはこれまでも厳しい目が向けられてきた。しかし泡盛やビールは製造業の少ない沖縄にあって重要な地場産業だ。
 県は9制度のうち6制度について延長だけでなく拡充も求めたが、内閣府から財務省への拡充要望は2制度にとどまった。税制優遇は企業誘致や地域振興など沖縄にとって実効性あるものでなければならない。現行制度の延長にとどまらず、地域の実情や企業ニーズに合う制度拡充を進めてもらいたい。