<社説>韓国大統領「共謀」 事情聴取に応じるべきだ


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 韓国の朴槿恵大統領の友人による国政介入疑惑は、検察側が友人と大統領府高官ら3人を起訴、朴氏についても「共謀関係にある」と断定し、容疑者として捜査に乗り出す緊迫した局面を迎えた。

 野党側は朴氏を罷免する弾劾手続きに動きだした。最高裁の審理を含めると結論は来春以降と見られ、国政の長期混乱は避けられそうにない。 
 日本で来月の開催を調整中の日中韓首脳会談、北朝鮮核ミサイルへの対応など内政、外交、安全保障にもさまざまな影響が懸念されている。憂うべき事態だ。
 大統領の支持率は5%台に低落し、特に若年層の19~29歳はゼロという。逮捕された友人の娘が名門大学に不正入学した疑惑が若者の怒りに火を付けた。首都ソウルや全国で合計数十万人規模の抗議集会が続いており、国民の政治不信は頂点に達している。
 圧倒的多数の国民が大統領退陣を求めており、もはや民心は朴氏を離れたと言っていい。しかしここにきて大統領を支持する集会も開催され、国政の混乱は国民の分断をも招いている。
 国民に疑惑を抱かせ、国政の混乱と国民の対立を招いた朴氏の責任は大きい。事態を早期に収拾する大統領としての責任も大きいと言わざるを得ない。
 大統領府は容疑を否定し、検察の事情聴取にも応じない姿勢だ。大統領は在任中は訴追されない特権に頼って捜査を逃れ、大統領のいすに固執しているように映る。
 しかし朴氏は国民への謝罪談話の中で「検察の捜査に最大限協力する」と明言していたはずだ。検察の事情聴取に応じ、一切の事実を明らかにすべきだ。
 朴氏の疑惑は、友人を国政に介入させ、友人が関わる財団などへの企業からの資金集めに関与していたというものだ。
 韓国の歴代大統領は自身や身内の収賄、企業と癒着した不正蓄財など金権政治を暴かれる末路をたどってきた。
 国民の根深い政治不信を拭い、挙国一致の信頼を取り戻すには疑惑を徹底解明するしかない。
 日韓合意に基づき元慰安婦への現金支給が始まったが、疑惑への不信感から合意破棄の訴えが強まっている。国政の混迷が、北朝鮮ミサイルに対抗して高まる核武装論を助長しないか懸念は尽きない。
 朴大統領には国政、外交の安定へ責任ある対応を求めたい。