<社説>翁長県政折り返し 中長期にらむ脱基地施策を


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 翁長雄志知事が就任して2年がたった。日本の民主主義、地方自治は機能しているのかと問い掛け続け、辺野古新基地を拒む揺るぎない姿勢は評価できる。

 「魂の飢餓感」など沖縄の歴史を踏まえた発言で県内外の幅広い市民に沖縄の民意を浸透させた。10日に全国11カ所であった集会に約8千人が駆け付け、新基地ノーを訴えたことにもそれは表れている。
 子どもの貧困解消や子育て環境の改善、産業振興や雇用状況の改善など喫緊の課題も横たわる。具体策の充実を急いでもらいたい。
 県政が折り返しに差し掛かった今、最大懸案である基地問題に課題が見える。沖縄のグランドデザインと連動した中長期的な基地施策を打ち出す時期に来ていよう。
 1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告が定めた県内移設条件付きの基地返還を巡り、県政の腰が定まらない印象を与える場面が増えている。
 那覇軍港の浦添移設について、知事は容認する姿勢を明確にした。2014年11月の県知事選当時は「容認」としていたが、就任以来、容認姿勢を示すのは初めてだ。
 先日は北部訓練場の過半返還の条件として、東村高江に六つのヘリ着陸帯が新設される状況を「苦渋の選択」と表現して着陸帯容認と報じられ、「決して容認でない」と釈明する一幕があった。
 日本の国費で老朽化した基地が改修されるSACO合意の本質は、負担軽減が大きくかすむほどの基地機能強化にある。それだけに、普天間飛行場返還と辺野古新基地阻止がセットになった出口戦略は、県全体の中長期的な脱基地戦略と併せて練り上げる必要がある。
 96年の普天間返還の日米合意後、当時の大田県政は2015年までの基地返還を盛り込んだ「基地返還アクションプログラム」と「国際都市形成構想」を将来構想として打ち出した。基地返還と経済振興の両輪を前面に掲げたことで本気度が伝わり、政府との交渉力を強めた。
 当時の革新県政と一線を画すとしても有効なやり方があろう。10年、20年後を見据えた翁長県政の包括的基地施策を立案し、脱基地を推し進める方策を描くべきだ。
 辺野古訴訟の最高裁審理など、基地問題はさまざまな節目が訪れる。翁長知事の発信力頼みでなく知略を尽くした県の戦略を持ち、政権と渡り合う力を高めてほしい。