<社説>石垣陸自受け入れ 住民影響と抑止力の説明を


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 中山義隆石垣市長が石垣島への陸上自衛隊受け入れを表明した。

 中山市長は、防衛省から具体的な計画が出ていないことを認めた上で、今後、計画の詳細が分かっても「受け入れ拒否は考えていない」と述べた。「石垣島への配備は国の専権事項と思っている」とも述べた。
 候補地近辺の開南、於茂登、嵩田、川原の4地区が反対する中で、地元への説明も不十分なままの受け入れ表明は、禍根を残すことになる。
 配備については昨年11月、防衛副大臣が石垣市に警備部隊と地対空、地対艦ミサイル部隊(計500~600人)を配備する方針を伝え、平得大俣地区の市有地とその周辺を候補地に挙げた。あれから1年以上たつが基地の面積や施設の位置など詳細は明らかにされていない。
 住民生活への影響が見えない中で、候補地に近い4地区が配備に反対するのも当然だろう。
 陸自レーダーの配備によっては、市登野城にある国の電波望遠鏡の観測に影響し国立天文台のプロジェクトを阻害する可能性もある。
 中山市長は防衛省による2回の住民説明会、市主催の公開討論会と市議会の議論を経たとしているが、近隣4地区との面談は見送った。説明不足の感は否めない。
 住民のもう一つの懸念は、陸自配備が逆に先島の緊張を高めるというものだ。
 中山市長は「南西地域の防衛体制充実のために陸自配備が必要だ」と抑止力論を挙げるが、専門家から疑問も出ている。元防衛官僚で官房副長官補を務めた柳沢協二氏は「最前線にパワーがあれば『(中国を)拒否する力』はある」と認める一方で、「相手側に本当に戦争する意思があれば、最初に攻撃される」と述べている。陸自配備は抑止力という点でも、もろ刃の剣なのだ。
 本来なら、防衛省の計画全体を見定め、住民への影響を図った上で受け入れか否かを決めるのが市長の責務だ。少なくとも直接影響を受けるであろう、4地区とは話し合うべきだった。これまで「市民の声を聞いて判断する」と繰り返してきた市長自身の発言とも矛盾する。
 配備ありきの姿勢では市民の了解は得られない。中山市長は、防衛省側に計画の詳細を明らかにさせた上で、民意を問うて決定すべきだ。