前人未到の領域に足を踏み入れるには、失敗を恐れない勇気と冷静な行動力が必要とされる。
沖縄経済は2017年も好調を維持しつつ、さらなる拡大の局面に入る。従来の枠組みを超えた展開や施策が求められる年であり、沖縄の勇気と行動力が問われる。
巨大市場のアジアを見据えた企業の進出や連携、改善しつつある雇用の質の向上などまだまだ課題は山積している。
これらの課題と向き合い、さらなる発展を遂げるにはどうするか。沖縄の真価が問われる1年とも言えよう。
好循環生む環境
1日付本紙に掲載された専門家4氏の県内景気予測では、100点満点で過去最高の平均88点となり、3年連続で最高値を更新した。
4氏ともに沖縄のリーディング産業である観光がけん引し、堅調な個人消費などが底支えするとの見方で一致している。
県内の観光入域客数を見ると、16年1~11月は約795万人で15年の年間実績約776万人を上回った。観光客800万人台は実現の可能性が高い。外国人観光客も約194万人となり、県が目標とする200万人達成は確実とみられている。
観光業の好調さはホテルなどの建設投資を呼び込み、雇用にも貢献する。有効求人倍率が16年6月に1・01倍となり、1963年の統計開始以来初めて1倍を超えた。失業率も3%台まで改善した。雇用状況の改善は賃金の底上げにもつながり、個人消費を押し上げる。こうした好循環が続くのが沖縄の強みといえる。
だがそれぞれ課題を抱えているのも確かだ。
観光では中国人観光客の「爆買い」が一段落したとされ、今後は「モノ」より、どのようなサービスを提供するかが問われている。
雇用面でもホテルや小売りなど一部業界では人手不足が慢性化している。求人には非正規社員が多く、最低賃金は全国で最も低い。
いずれの課題にも共通するのは「質的向上」をどう実現するかということだ。
従来通りの手法でも、観光客は沖縄に来るかもしれない。中身はともかく雇用も一定程度確保されるだろう。だがそこから脱却しなければ将来への展望は開けない。特効薬はないかもしれないが、知恵を絞って質的向上を図りたい。
好循環が続く今だからこそ、行政や企業は大胆な施策・方針を打ち出し、世界と渡り合える観光地・沖縄の地位向上、働く人の環境改善を図ってもらいたい。
アジアに飛躍を
県アジア経済戦略構想は16年3月の策定、推進・検証委員会による提言を受け、いよいよ行動の年となる。
国際見本市の誘致などによる国際的な認知度の向上、大型クルーズ船誘致に対応するインフラ整備、国際物流ハブ拠点の形成など検証委の提言は多岐にわたる。
国内でアジアに最も近い地理的優位性は沖縄の財産だ。これらの提言を実現していく上でもアジア諸国との連携、県内企業の積極的な海外進出などを官民一体となって推進していくべきだ。
国内最大規模の国際食品商談会「大交易会」により、海外から沖縄への注目度も高まっている。県産品のブランド力向上や2020年供用開始のMICE(国際会議や報奨旅行)施設などをフルに活用し、アジアを軸に経済交流をさらに広げたい。
17年で期限の切れる沖縄振興を目的とした特別措置、関連税制は2~3年の延長が決まっている。
酒税軽減措置を受けてきた泡盛業界をはじめ、延長期間短縮は各業界、企業の中長期計画に影を落としかねない。
逆境には違いないが、逆に沖縄経済自立への好機とは言えないだろうか。将来も必要な仕組みや改善が必要な制度を沖縄が主体的に仕分けし、国に求めていく。依存体質から脱却する好機と捉えたい。