<社説>共謀罪提出へ 監視招く悪法は必要ない

 罪名を言い換える印象操作をしても悪法は悪法だ。思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。

 安倍晋三首相はテロ対策強化を名目に「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を今月20日召集の通常国会に提出する方針を固めた。
 2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、国際的なテロに備えるために法整備が必要だと説明する。しかし、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など処罰する仕組みはあり「共謀罪」の新設は必要ない。
 治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。しかし共謀罪とは、実行行為がなくても犯罪を行う合意が成立するだけで処罰する。日本の刑法体系に反するものである。
 通常は共謀が密室で誰も知らないところで行われることを考えると、合意の成立を認定することは難しい。いかなる場合に合意が成立したのかが曖昧になり、捜査機関の恣意(しい)的な運用を招く恐れがある。捜査機関の拡大解釈で市民運動や労働組合が摘発対象になる可能性もある。
 共謀罪を摘発するための捜査手法として尾行のほか、おとり捜査や潜入捜査が考えられる。それだけでなく2016年5月に通信傍受法を改正して、組織犯罪だけでなく一般犯罪まで傍受対象範囲を広げている。15年6月には裁判官の令状があれば、捜査機関が本人が知らないうちにGPS機能を利用した位置情報を取得できるようになった。法制審議会では室内に盗聴器を仕掛ける室内盗聴の導入についても議論している。
 法務省は「共謀段階での摘発が可能となり、重大犯罪から国民を守ることができる」と必要性を訴えるが、むしろ国民のプライバシーが根こそぎ政府に把握される恐れがある。
 政府は今回、罪名を「共謀罪」から「テロ等組織犯罪準備罪」に言い換え、対象を「組織的犯罪集団」に限定したと説明する。しかし、合意の成立だけで犯罪が成立するという点は変わらない。
 組織犯罪処罰法案が成立すれば、既に成立している特定秘密保護法などと組み合わせて、戦前の治安維持法のように運用される恐れがある。戦前のような監視社会に逆戻りさせてはならない。



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