<社説>高齢者75歳以上 明るい生涯現役社会構築を


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 日本老年学会などが「高齢者」の定義を現在の65歳から10歳引き上げて75歳以上に見直し、65~74歳を「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表した。高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけにするのが狙いのようだ。元気な高齢者が社会の担い手になるのは望ましい。

 引き上げの背景には、医療の進歩や生活環境の改善により、10年前に比べて身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っているとの判断がある。内閣府の調査では「健康問題の日常生活への影響」を問うたところ、65~69歳の87%、70~74歳の82・3%が「ない」と答えている。高齢でも介護や医療に頼らず、自立した生活を送れる健康寿命が日本は男女とも70歳を超えている。
 高齢者を65歳以上とする定義は世間一般の認識ともずれている。厚生労働白書によると、40歳以上の3千人を対象に実施した意識調査で「高齢者であると思う年齢」を尋ねたところ「70歳以上」という答えが最も多く、41・1%に上った。「75歳以上」も16%あった。
 だが意欲と能力のある高齢者が活躍したいと望んでも、現在の日本社会が受け止められるだろうか。従業員50人以上の企業1万5千社への調査で65歳以上の雇用確保について聞いたところ、6割以上が「実施も検討もしていない」と回答している。「65歳までの対応で精いっぱい」「健康・体力面での不安が増す」などを理由に挙げている。雇用促進、能力開発、再就職の支援強化なども必要だ。
 加えて高齢者が人生の最後まで安心して暮らせる仕組みづくりも進める必要がある。厚生労働省が推進している「地域包括ケアシステム」は、高齢者が身近な地域で医療、介護、予防、生活支援などが一体的に提供されるサービスだ。こうした高齢者を支える態勢の構築を急ぐべきだ。
 一方で定義の見直しが年金支給年齢の引き上げなど社会保障制度の見直しの議論に影響を与える可能性もある。提言をまとめた大内尉義・虎の門病院院長は「年金支給年齢の安易な引き上げなどにつながらないようにしてほしい」とくぎを刺した。当然だ。
 高齢者の低賃金労働の拡大や一方的な医療費抑制などに傾いてもいけない。明るく活力ある生涯現役の超高齢社会につなげたい。