<社説>台湾原発全廃へ 日本も国民の安全重視を


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 台湾の立法院が2025年までに、3原発6基の原子炉を事実上、全て廃炉にすることを盛り込んだ電気事業法の改正案を可決した。総統令を経て発効する。

 「フクシマの教訓」を生かせば、脱原発は当然である。国民の安全を重視した対応を歓迎したい。
 台湾では福島第1原発事故直後の11年4月に1万人規模の脱原発デモが起き、13年3月のデモには各地で計22万人が参加した。台湾世論は明確に脱原発を望んできた。
 蔡英文総統は昨年1月の総統選で、25年までの脱原発を公約に掲げて当選した。世論を重視する姿勢が支持を受けたと言えよう。
 対照的に安倍政権は教訓から何ら学んでいない。脱原発を求める世論も一顧だにしない。原発の安全神話は完全に崩壊したにもかかわらず、原発輸出を成長戦略の要と位置付け、官民一体となって海外に売り込んでいる。
 だが、昨年11月には日本などの受注が決まっていたベトナムの原発建設計画が白紙撤回された。これに続く台湾の脱原発への転換を、安倍政権は重く受け止める必要がある。
 インドやトルコなど他の海外案件も、政情不安などのリスクを抱えている。危険さ故に新増設が見通せない日本国内に代わって、輸出で原発産業の維持を図る安倍政権の成長戦略は日本への信頼を低下させかねない。
 日本企業の米原発子会社が原発6基を建設する計画のインドでは、重大事故の際に原発メーカーにも責任を負わせる原子力損害賠償法が重荷になっている。日本の技術に基づく原発が絶対安全ならば、同法は障害にならないはずだ。
 日本メーカーが原子炉などを輸出し、建設中だった台湾の第4原発はトラブルが相次ぎ、14年に工事が凍結された。日本の技術が万全ではないことの証しであろう。
 想定外の災害は防ぎようがない。福島の過酷な状況を再び生じさせることは国内に限らず、海外でも許されない。
 安倍政権は原発輸出を見直すべきである。加えて台湾のように国民の安全を重視し、原発再稼働を推し進める政策を破棄し、脱原発へと転換すべきだ。
 日本に求められていることは「フクシマの教訓」を踏まえ、再生エネルギー技術に磨きをかけ、世界の脱原発をリードする役割を果たすことである。