<社説>米軍事故で県提案 全国知事会に働き掛けを


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 米軍機事故の原因の検証も安全対策も不透明なまま訓練が再開される不条理は改めねばならない。

 米軍オスプレイ機の墜落事故を受け、翁長雄志知事が新たな協議機関の設置を提起している。
 大きなポイントは、事故原因の検証と安全対策が「県民不在」のまま進む現状を改め、県の意見を反映させよ、という主張である。
 県の検討案は(1)米軍事件・事故の詳細な事実関係を県に通報(2)原因究明を徹底し、再発防止策を県に説明(3)これらの対応に県の意見を反映させる(4)県民に説明する-というものだ。
 当然の要求であり、政府、米軍は真剣に受け止めるべきだ。
 県内では日本復帰後も1年に1件以上のペースで米軍機の墜落事故が起きている。原因調査は米軍任せで、米軍から政府に「再発防止策」が説明され、一方的に訓練が再開される。被害当事者の県民、県は蚊帳の外に置かれ、政府の「米軍が安全というから安全」という空念仏を押し付けられる。その結果が事故の続発である。
 今回の墜落事故も同じ道をたどった。「空中給油ホースがオスプレイのプロペラを損傷した」とされる事故原因について、米国のオスプレイ専門家ですら「新たな構造的欠陥」と指摘している。
 本来ならオスプレイの構造上の問題、強風・乱気流の環境的要因、操作ミスの人為的な要因が総合的に究明され、県も同席する場で納得いく説明がなされるべきだ。
 原因究明に基づく安全対策も県への丁寧な説明と、了解が不可欠なはずだ。一連の作業が全て米軍と政府間のやりとりで済まされている現状はあまりにも理不尽だ。
 米軍事件・事故への対応では県、国の出先機関、在沖米軍の「三者協議会」が設置されながら「現地レベルで解決できる事項」に限定され、形骸化した経緯がある。
 基地問題解決に県の意見を反映させるには、米軍の基地自由使用を容認する政府の姿勢を改めさせる必要がある。
 オスプレイは在日米軍、陸自への配備も計画されている。関係自治体にとって今回の墜落事故は「対岸の火事」ではないはずだ。
 基地問題解決への対応に地元自治体の意見を反映させることは、全国共通の課題となり得る。昨年は全国知事会の沖縄の基地負担軽減を目指す研究会も発足した。翁長知事、県は全国知事会に積極的に働き掛け、後押しを得たい。