<社説>施政方針と沖縄 日米同盟の犠牲を拒否する


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 沖縄を犠牲にする日米同盟は永続しない。安倍晋三首相には米国一辺倒を改め、沖縄、国民の命と暮らしを大事にする政治への転換を求める。

 安倍首相の施政方針演説は、トランプ米大統領との会談を念頭に「日米同盟の強化」を前面に打ち出した。「同盟強化」に続けて「北部訓練場の4千ヘクタール返還」を沖縄の負担軽減と誇示し、「普天間飛行場の辺野古移設」に強い決意を示した。
 それをまとめる言葉が「抑止力を維持しながら、沖縄の負担軽減に結果を出す」である。
 県民の認識とかけ離れ、基地負担軽減を願う県民の思いを踏みにじる発言に憤りを禁じ得ない。
 北部訓練場の過半返還は、ヘリパッド建設の代償を押し付けた。辺野古新基地は、米軍の駐留を恒久化する基地強化にほかならない。
 「沖縄の負担軽減」はまやかしだ。沖縄を犠牲にした「抑止力の維持」が首相の本音であろう。
 反対運動を力でねじ伏せヘリパッドを完成させ、辺野古新基地の工事再開を強行した。それを手土産に米大統領に会い「同盟の絆を強化したい」と述べたのである。
 欺瞞(ぎまん)に満ちた首相演説、沖縄の犠牲で成り立つ「日米同盟強化」は承服できない。辺野古新基地建設を力ずくで推し進めても、沖縄の反対運動の火は消えない。日本の一地域に過重負担を押し付け続ける日米同盟は危うい。日米首脳はそう認識すべきだ。
 安倍首相にはあらためて沖縄の民意に向き合い、辺野古新基地建設を断念するよう求める。
 日米同盟を基軸とする安全保障政策の危うさは「東シナ海、南シナ海の緊張」や、南スーダンへの自衛隊派遣に触れた「積極的平和主義」の言葉にも見て取れた。
 トランプ大統領は中国の海洋進出を批判し、海軍強化の姿勢だ。日米同盟の中国脅威論への傾斜は新たな緊張の火種となりかねず、尖閣、南シナ海の緊張は在沖基地強化の口実にされる恐れがある。
 「積極的平和主義」の美名で自衛隊の海外派遣を拡大し続け、日本が戦争に巻き込まれる懸念も拭えない。
 日本の安全保障に重要なのは中国、北朝鮮との関係改善、緊張緩和だ。日米同盟を重視するあまり両国と米国の対立に日本が巻き込まれることがあっては本末転倒だ。日米同盟一辺倒でない近隣諸国との対話外交が大事だ。