<社説>観光客最高861万人 次世代見据えた施策を


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 2016年(暦年)の県内入域観光客数が初めて800万人を突破した。県によると、前年比約85万人増の861万3100人となり、16年度(4月~17年3月)の目標である観光客数840万人の達成も確実視されている。

 1972年の本土復帰から75年の海洋博を挟んだ数年間を沖縄観光の揺籃(ようらん)期とすれば、80~90年代はバブル経済、沖縄ブームなどを追い風に観光客数を伸ばした成長期といえる。
 2000年代以降は順調に観光地として国内外に定着し、観光客1千万人の夢が現実に近づいた。これからは次の成熟期を見据えた取り組みに着手する時期だ。具体的にはリピーターの獲得や提供するサービスの質の向上が挙げられる。沖縄観光の魅力をさらに増すためにも関係者の努力が不可欠だ。
 16年の特徴は前年比で約58万人増え、初めて200万人台となった外国人観光客の増加だ。中国本土、台湾、香港、韓国などアジア空路の新規就航が相次いだ。クルーズ船寄港は最多の387回となり、17年も500回を見込んでいる。
 タイ・バンコクへの新規路線開設が2月に予定されており、外国人観光客の増加は続くとみられる。国内観光客が微増で推移する状況では、外国人観光客の受け入れ態勢整備がますます重要となる。
 そのためには沖縄観光の長所と短所を把握する必要がある。
 県が実施した外国人観光客実態調査(15年度)によると、空路・海路で沖縄に来た外国人観光客の満足度が高いのは「観光施設等でのおもてなし」をはじめ食事、宿泊などが上位にある。
 一方で満足度が低いのは外国語対応能力や公衆無線LAN「Wi-Fi」の整備などだ。海をはじめとする自然や沖縄料理などに代表される文化、人との触れ合いといった観光客が求めるものを、さらに前面に打ち出す必要がある。
 そのためにも多言語に対応できる人材の育成、情報通信環境の整備といった弱点を克服する施策が重要だ。沖縄観光コンベンションビューローをはじめ、関係機関の取り組みには今以上のスピード感が求められる。
 過去を振り返ると、米中枢同時テロ後の風評被害や景気低迷など沖縄観光は国内外の環境にも左右されてきた。今後、求められるのは内外の変化に動じない足腰の強さだ。好調な今だからこそ、次世代を見据えた施策を打ち出したい。