<社説>翁長知事訪米 新基地問題打開する戦略を


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 翁長雄志知事が就任後、3度目の訪米行動に出発した。トランプ新政権に影響力を持つ連邦議員やシンクタンクなどを訪問し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設の断念を訴える。

 過去2回に比べ、逆風の中での訪米である。辺野古違法確認訴訟の最高裁判決で県が敗訴した。安倍政権は海上工事を再開し、圧力を強めている。
 さらに教職員採用への口利き疑惑で、基地問題で知事の右腕となってきた安慶田光男副知事が辞任した打撃は大きい。混迷の中にある翁長県政の立て直しは急務だ。
 難局を打開するためにも、知事は同行するオール沖縄会議のメンバーと共に従来の発想にとらわれない戦略的な行動を取るべきだ。
 7割を超える県民が反対し続ける新基地建設が及ぼす環境と生活破壊の不条理、オスプレイ墜落事故が県民に与えた衝撃などを分かりやすく発信してほしい。欧米では到底許されない住宅地上空でのオスプレイの宙づり訓練など、行き過ぎた二重基準の基地運用が、普遍的価値である人権を脅かしている実態も伝えてもらいたい。
 トランプ政権の安全保障政策を担う陣容には元軍人、特に海兵隊出身者の重用が際立つ。「狂犬」の異名を持つ元海兵隊大将のマティス氏が国防長官に就き、国土安全保障省長官のケリー氏も元海兵隊大将だ。国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長には海兵隊出身のポティンガー氏が就く。
 海兵隊はOBを政界中枢に送り込み、政府、議会への影響力が強い。沖縄での既得権として辺野古新基地を位置付け、見直しを拒む可能性も否めない。
 トランプ政権はオバマ前政権のアジア重視政策を踏襲するとされる。だが、駐留経費負担の増額要求、辺野古移設など個別の事案についての出方はまだ見えない。
 一方、米議会では上院軍事委員会のマケイン委員長(共和)が米本国や海外の基地閉鎖・再編の本格的検討に取り組む姿勢を示しており、在沖米軍に影響する可能性がある。
 米国第一で利益を追求するトランプ政権の安保政策がどこに向かうのか。あらゆる可能性に備えながら、沖縄側の戦略を組み直す必要性がある。
 新基地建設は県民の反発を強め、中長期的には在沖基地の安定的維持も揺るがすだろう。知事が米国に働き掛ける重要性は変わりない。

英文へ→Editorial: With U.S. trip, governor needs strategy for breakthrough on new base issue