<社説>クルーズ拠点 国際観光地への成長期待


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 国土交通省は国際クルーズ拠点に本部、平良の県内2港を含む6港を選定した。官民が連携して大型船が寄港できる岸壁や旅客ターミナルビルを整備する。

 翁長雄志知事が経済政策の柱に据える県アジア経済戦略構想は、急増するクルーズ船の拠点港整備が盛り込まれている。今後もクルーズ市場は東アジア沿岸地域を中心に成長が見込まれている。2港が国による拠点港に選定されたことで、沖縄が国際クルーズの先進地として成長することを期待したい。
 県の2016年の暦年(1~12月)入域観光客数は初めて800万人を突破し、過去最高を記録した。特にクルーズ船の沖縄への寄港回数が大幅に増加し、16年の県内寄港回数は全国最多の387回で、海路客が前年比64・2%増の76万2600人となった。
 港湾別では那覇港への寄港が193回(15年115回)と最も多く、石垣港95回(同84回)、平良港86回(同13回)、中城湾港8回(同0回)とそれぞれ増加した。宮古島の平良港は新規のクルーズ船会社が就航を決めたことなどで大幅増となった。
 引き続きクルーズ船の受け入れを拡大していくには、大型船の寄港に対応した岸壁や旅客ターミナルの整備が必要となっているほか、乗客が上陸する際の税関・入国管理・検疫(CIQ)の機能や要員を各地の港でどのように確保していけるか課題となっていた。今回の拠点港選定は、こうした課題克服の好機だ。
 平良港はクルーズ世界最大手のカーニバル(米、英)が中国発着の主要拠点として旅客ターミナルビルを整備する。
 本部港はアジア大手のゲンティン香港が中国、台湾の拠点としてCIQホール、待合所、観光案内所などを備えた旅客ターミナルビルを整備する。現在20万トン級の客船に対応する岸壁を整備中で、北部地域の豊かな自然環境を活用したエコツーリズムなどを提供する。
 これら投資するクルーズ船会社は他社に先駆けて港を予約できるため、寄港計画を立てやすくなり、寄港回数の大幅増加や長期安定的に寄港する環境が整う。
 ただ、クルーズ客の県内滞在時間は平均数時間で空路客と比べ短く、1人当たりの消費単価も限られる。停泊を延長して1泊してもらう工夫も必要だ。