<社説>県内失業率4・4% 持続的な労働環境改善を


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 県経済をけん引する観光の好調さを背景に、2016年の県内完全失業率は4・4%と1993年以来、23年ぶりに4%台を記録した。16年12月は3・2%と前年同月に比べ1・8ポイント下がり、県内の雇用状況は大きく改善している。

 県内の有効求人倍率も16年10~12月は3カ月連続して1倍を超えている。7~8%台を記録した00年代に比べれば、県内の労働環境は冬の時代を脱したかと思わせる。
 だが全国と比較した場合、県内の状況を楽観視するのは早い。
 総務省が発表した16年の地域別完全失業率は、沖縄だけが4%台で全国一高い。北海道、東北、南関東、近畿、四国、九州は3%台であり、東海、北陸、北関東・甲信、中国は2%台だ。有効求人倍率も16年の全国平均は1・36倍であり、16年12月は最高の東京(2・05倍)と比べれば沖縄は半分の1・02倍にすぎない。東京であれば、仕事を求める人が1人いれば二つの求人があるが、沖縄では一つしかないことになる。県内では仕事を選択する余裕がないともいえる。
 雇用関連の数値が改善するのは良いことだが、内実を見据えた上で冷静な対処を考えたい。
 例えば、若年層の雇用は全国と沖縄で大きく差がある。16年に20~24歳の完全失業率は全国で5・4%だが、沖縄は8・9%に上る。25~29歳でも全国4・6%、沖縄6・1%と開きがある。
 県内の求人に非正規雇用が多いことや、選択肢の少なさから求職者が希望する職業と実際の求人に食い違いがあると考えられる。
 新規求人に占める非正規の割合は、県内が31・6%で全国平均は42・3%と10ポイント以上開いている。
 不安定な雇用と将来設計が描きにくい給与体系では、若年層をつなぎ止めるのは難しい。若年層の定着率が悪くなれば、職種によっては技術継承が困難になる恐れもある。高度な技術を必要とする型枠工関連業者が、後継者育成などのため組合を設立した例もある。
 企業側は正規雇用の枠を増やし、魅力ある職場を整えてもらいたい。同時に仕事を通じた社会貢献など働く動機付けや、キャリアアップにつながる語学研修、資格取得など職業教育のさらなる充実に行政や教育機関が一体となって取り組んでほしい。
 県経済が右肩上がりにある今こそ、一時的ではない持続的な労働環境の改善を図るべきだ。