<社説>菅長官会見 論理破綻した「負担軽減」


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、海上の本体工事が始まった6日、菅義偉官房長官は会見で、辺野古移設が「沖縄の基地負担軽減」になるとの持論を展開した。

 しかし誤った情報、政府側に都合よく解釈した言説が目立ち、看過できない。
 会見で菅氏は「よく地元は反対だと言われているが、辺野古地区の3区長は条件付き容認と明確に言っている」と述べた。だが、辺野古新基地建設現場に最も近い久辺3区のうち、久志区は移設反対を堅持している。
 そもそも行政上の最小単位となる基礎自治体は区ではなく、市町村と特別区だ。地方自治法は基礎自治体のあり方として「地域行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」と規定する。
 地域行政に責任を負う名護市の市長は辺野古新基地建設に明確に反対している。しかし菅氏の言う「地元」から名護市は抜け落ちる。
 安倍政権の成果として2014年に普天間飛行場のKC130空中給油機全15機を岩国基地に移駐したと強調する。しかし、KC130は今も沖縄で空中給油訓練を繰り返す。昨年12月に名護市安部で起きた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの墜落事故につながった空中給油訓練は沖縄で行われ、事故後も岩国基地のKC130が飛来して訓練しており、危険性は消えていない。
 辺野古新基地ができれば「いずれの飛行経路も海上となり」、「住宅防音が、実はゼロになる」と菅氏は言うが、辺野古新基地のV字滑走路の先には住宅やリゾートホテルがある。加えて本島内では住宅地上空を問わず、夜間を問わず米軍機の訓練が行われており、騒音も危険性も存在する。
 「辺野古移設は17年前に県知事、市長が同意して、翁長雄志知事も当時、県内移設を堂々と演説した」とも解説した。しかし、その移設計画は稲嶺恵一知事(当時)の公約を基に1999年に閣議決定された「軍民共用、15年の使用期限」案だった。同案は2006年に小泉政権下で正式に廃止され、滑走路がV字に2本と、軍港を備える機能強化された計画に変貌した。
 菅氏の言う「沖縄の負担軽減」は逆に沖縄の基地機能強化につながっており、論理破綻(はたん)しているのだ。