<社説>米軍属の被告証言 被害女性に落ち度はない


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 未来を断たれ無念のうちに亡くなった被害者だけでなく家族を何度傷つけるのか。

 米軍属女性暴行殺人事件で殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪で起訴されている元米海兵隊員で米軍属の被告が犯行について「(事件が起きたあの場所に)あの時居合わせた彼女(被害女性)が悪かった」との認識を示していることが分かった。米軍準機関紙「星条旗」が被告の弁護人を通じて同被告の証言を報じた。
 事件当日の日没は午後7時で、被害女性は同8時ごろウオーキングに出た。大通りがいつものコースだった。日暮れから1時間たつかたたずに、商業施設に程近い通りを歩くだけで見も知らぬ男に襲われ殺された。悪いのは加害者で、被害者に落ち度は全くない。
 被告は日本の法制度では女性暴行は親告罪で、被害者による通報率も低いとして「逮捕されることについて全く心配なかった」と述べている。日米地位協定で守られているとの意識もあったのではないか。
 被告側は強姦致死と死体遺棄の罪については起訴事実を認める一方で、殺人罪については殺意がなかったとして否認している。逮捕前の県警の調べに対して殺害をほのめかす供述をしていたが、逮捕直後から黙秘に転じた。被告は犯行の全てを法廷で明らかにし、罪を認め被害者に謝罪すべきだ。
 証言によると、被告は「高校時代から女性を連れ去り乱暴したいとの願望があった」という。そして「人殺しがしたい」という動機で海兵隊に入隊した。
 専門家は、海兵隊では男性的な攻撃性を突出するために、徹底的に女性を蔑視する非人間的な訓練が行われると指摘する。除隊後、効果的な殺人者となる非公式な教育を受けた被告が「欲望を満たす」ために女性に襲い掛かった。
 県警によると米軍構成員(軍人、軍属、家族)による強姦は1972年5月15日から2016年末までの間に130件発生している。被告の供述は同じ痛みを味わった女性たちをも傷つけた。退役米軍人でつくる「ベテランズ・フォー・ピース(VFP)」は海兵隊教育が今回の犯罪を生み出したと結論付けている。軍隊教育で犯罪の再発を防げないとなると、海兵隊の撤退こそ一番の再発防止策だ。