<社説>米の中東政策転換 「2国家共存」が和平の要


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 トランプ米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との会談で、イスラエルとパレスチナ国家の「2国家共存」にこだわらない姿勢を示し、世界に衝撃を与えた。

 イスラエルとパレスチナの共生を目指す「2国家共存」は従来、米国が堅持し、国際社会も支持する中東和平交渉の要の指針だ。
 イスラエル1国のみの承認に転換すると、パレスチナ側の猛反発は必至だ。和平交渉が根底から瓦解(がかい)し、新たな紛争の火種となりかねない。
 国連のグテレス事務総長は直ちに「2国家共存以外に解決方法はない」と批判した。日本政府も菅義偉官房長官が「2国家共存を支持する日本の方針に変わりない」と表明した。
 国際社会が共同歩調で米政権の過度のイスラエル寄りの政策転換を諌(いさ)め、「2国家共存」政策の堅持を働き掛けねばならない。
 米国のヘイリー国連大使は「政権も米国も2国家共存を支持する。揺るがない」と軌道修正した。米政権内にも慎重論が根強いことをうかがわせており米国内、政権の動向を注視したい。
 トランプ氏が会談で、在イスラエル米大使館のテルアビブからエルサレムへの移転に意欲を示したことも注視したい。同氏は大統領選中からイスラエルが首都とするエルサレムへの移転を表明し、新政権で具体的な検討に入っている。
 エルサレムはパレスチナ自治政府も将来の首都と位置付けている。エルサレムはイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の聖地である。
 ここに米大使館が移転すれば「パレスチナ・イスラエル間で本格的な武装衝突が始まり、米国内でも同時多発テロを上回るテロ事件が起きる可能性がある」と、中東問題に詳しい佐藤優・元外務省主任分析官は指摘している。
 米国は従来、親イスラエル政策を取っているが、オバマ前政権はイスラエルの占領地でのユダヤ人入植活動を非難する国連決議案を否決せずに棄権する慎重な対応を取った。
 トランプ氏は前政権のバランス重視から、親イスラエルに前のめりの政策に転じた。同様に選挙中からの親ロシア発言、大統領就任後も「一つの中国」見直し発言が国際社会に波紋を広げた。
 米政権の在日・在沖米軍基地政策を含め、日本政府は米国一辺倒でなく、国際世論も見据えて是々非々の姿勢で臨むべきだ。