<社説>福建への投資促進 官民協働を深化させよう


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 県産品の輸出拡大に向けて、大いに期待が膨らむ。県内企業の中国貿易を支援する日本国際貿易促進協会の沖縄分会「琉球経済戦略研究会」が、中国・福建省商務庁の外郭団体「福建省国際貿易促進委員会」と経済交流の促進を図る覚書を締結した。

 2016年12月には沖縄県と福建省が「経済交流促進に係る覚書」を締結しており、行政と民間ベースの両方で協力する態勢が整った。
 県と福建省は商談会や見本市などを開催し、双方で進出する企業を支援する。沖縄側が望んでいるのは通関・検疫作業の簡素化で中国側も実現には前向きとされる。
 中国貿易で現在、課題となっているのは通関・検疫作業の迅速化だ。中国国内でも比較的作業が早いとされる上海でも日本から食品を輸出した場合、通関に15日、検疫に約30日かかる。
 こうした作業の遅さは消費・賞味期限のある食品にとっては致命的になりかねない。県は1月から課題解決の方策を探るため実験を始めた。実験では黒糖などの菓子類、もろみ酢などの健康食品など約1トンを輸出する。
 実験を通して通関・検疫の迅速化に向けた協議を中国側と行うだけでなく、中華圏の嗜好(しこう)を確認することで商品開発などにつなげる狙いがある。
 行政同士の連携によって、経済交流を活発化させる制度面での整備が進めば、民間企業にも大いに商機が生まれ、民間側の投資も活発化することが予想される。今回覚書を締結した福建省国際貿易促進委員会には3千社以上が加盟する。巨大な中国市場に進出するに当たり、格好のパートナーを見つけたと言えよう。
 今後は中国でも高齢化に伴う介護や福祉関連の事業が増えると予想される。中国で高齢者福祉を支援する団体が、南城市に介護技術の研修施設を開設する計画もある。モノに限らず、人の交流も盛んになるよう期待したい。
 14世紀から琉球と中国の交流は那覇、福州を窓口として進められ、共に栄えてきた。中国との関係は政治的に難しいものの、経済は活発という意味で「政冷経熱」と言われて久しい。21世紀の今、経済を通して新たな関係を構築することは沖縄、日本、中国にもメリットがある。沖縄と福建の経済交流に当たっては官民の協働をさらに深化させたい。