<社説>沖縄空手会館開館 伝統武術の神髄発信の力に


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 「空手発祥の地」を世界に発信し、沖縄空手の精神を普及させる拠点の誕生は大きな意義を持つ。

 沖縄空手会館がきょう4日開館する。世界に誇る沖縄文化の一翼を担う伝統武術の殿堂完成である。沖縄空手の神髄を受け継ぐ場として積極的に活用したい。
 沖縄空手は主に競技空手として世界に広がっている。競技者・愛好者は今や1億人とも言われるほどである。
 一方で、県外・海外では「型」が正しく継承されていないと指摘されて久しい。空手会館はその長年の課題を解消する重要な役割を担う。成果を期待したい。それには県空手界を挙げた協力が不可欠である。
 各流派・団体が一致協力することで、空手会館の価値はさらに増す。空手会館の開館を記念し、来年8月に開催される第1回沖縄空手国際大会はその試金石になろう。
 この大会では「型」のみを実施する。各流派が守ってきた伝統を重視した画期的な大会は沖縄だけでなく、国内外の選手の大きな刺激になる。
 通常使われる「形」ではなく「型」に県がこだわったことも、沖縄空手の伝統を踏まえてのことである。伝統を重んじる県の姿勢を高く評価したい。
 将来にわたり崩されないとの意味を包含する「型」を海外の空手家に体得してもらうには、指導する体制づくりが欠かせない。教える側と学ぶ側が生み出す相乗効果の積み重ねを、伝統の継承と沖縄空手発展につなげたい。
 2020年東京五輪に向けて、県が昨年から取り組む各国への事前合宿の働き掛けを、さらに強化してほしい。五輪の時期だけに限らず、空手会館を国際交流の場と位置付け、活用したい。青少年に与える影響も計り知れない。
 空手資料の量・質とも県内一という展示施設には、空手の歴史や「型」を説明する映像シアターもある。沖縄空手の価値を県民に認識させることに役立てたい。多くの観光客を呼び込むような仕組みづくりも検討してほしい。
 松濤(しょうとう)館流の開祖・船越義珍の顕彰碑には「空手に先手なし」と刻まれている。空手の目的は相手を倒すことではなく、厳しい鍛錬に耐え、自らに打ち勝つことである。空手会館は普遍的な価値を持つ沖縄空手の精神も象徴する。開館を関係者と共に喜びたい。