情報の本来の所有者である国民の知る権利を十分考慮しない判決であり、残念だ。
東村高江などを通る県道70号の日米共同使用に関する文書を、県が開示した決定を取り消すよう国が求めた裁判で、那覇地裁は県の開示決定を違法と認定し、この決定を取り消した。
情報公開制度は原則公開である。今回の場合、県は情報公開条例に基づいて防衛局長に意見書を提出させるなど、制度上の諸手続を経て開示を判断した。
県道の使用条件を知ることが、なぜ国の主張する「米国との信頼関係が損なわれる」ことになるのか。判決は具体的に根拠を示していない。「米国との信頼関係」を唱えれば、憲法で保障された知る権利や地方自治の本旨が覆されることがあってはならない。
日米合同委員会は1960年、日米両国の同意がない限り議事録を公開しないと決めた。今回の裁判で沖縄防衛局は、日米両国の同意を求めた60年の日米合同委議事録の一部を提出した。
県側は公開を決定した日米共同使用に関する文書について「日米合同委員会の公式な議事録ではなく、共同使用の条件や期間、区域などが記載されているにすぎない」と主張した。
しかし判決は、日米合同委議事録の一部を構成するとして「日米両政府の合意なくして公開されない」と認定した。米側が公開に反対しているなどとして公開決定を取り消した。
今回地裁に提出された60年日米合同委の議事録を、NPO法人が外務省に開示請求したところ「日米間の信頼関係を損なう恐れがある」として不開示になった。
確かに情報公開法には外交・防衛・治安に支障を及ぼす恐れがある情報は、省庁の裁量で不開示にできる規定がある。だが裁判所に開示した文書が、不開示になったのはなぜか。規定が都合良く解釈されていることにならないか。
県道の使用条件が安全保障上の重大事項とは考えられない。国は米国に対して公開するよう交渉すべきだった。
専門家が指摘するように、いくら住民と対立関係にあろうとも、まず情報を公開して、それを基に議論しないと、対立しか生まない。公開するよう努力しなければ、国と県民の信頼関係は高まっていかない。