<社説>東日本大震災6年 避難者支援さらに拡充を


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 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年となった。

 被災地以外で震災報道が少なくなったと懸念する声を聞く。社会が関心を失う中で、被災者に対する偏見が広がっていることを憂慮する。福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が一つの例だ。
 復興に向けて生活再建が進む一方、古里に戻りたくても戻れず苦悩している人々がいることを忘れてはならない。私たちに何ができるかを考え、共に歩みたい。
 東日本大震災で故郷を離れ、プレハブ仮設住宅や賃貸住宅、親族宅などに身を寄せる避難者は全国で12万3千人に上る。阪神大震災では約5年で仮設住宅がなくなったのに対し、岩手、宮城、福島の被災3県では1月末現在で1万8千戸に入居者がいて、仮設生活の解消も見通せない。
 沖縄県内への避難者数は598人(1月現在)。県別では福島県が419人と最も多く、宮城県92人、岩手県3人。ピーク時の約半数に減った。
 県が2016年11~12月に県内避難者を対象に実施したアンケート結果によると、88%が今後の生活について「避難を継続」「県内に定住する」と答え、沖縄で県内の生活を望む避難者が大多数であることが明らかになった。中には経済的な理由で戻れない人もいる。
 福島原発事故で避難区域外から避難した自主避難者に対する住宅無償提供がことし3月で打ち切られる。支援打ち切りは避難者の生活を直撃する。県内への避難者は子どものいる世帯の割合が高く、二重生活の長期化で経済的不安を抱える世帯も多い。県は新たな補助制度を設けているが、さらに支援を拡充してほしい。
 避難者は国の原発政策が招いた事故の被害者である。当然ながら国は、被災者の生活安定に責任を持つべきだ。
 一方、横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が発覚した昨年11月以降、全国各地で同様のケースが存在することが明らかになった。横浜市の男子生徒は名前に「菌」を付けて呼ばれていた。
 教育現場で被災地や避難者の現状を伝え、放射線について科学的な知識を教える必要がある。同時に社会が関心を持たなければ、偏見はなくならない。大人の責任でもある。