<社説>つり下げ落下事故 危険な訓練を廃止せよ


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 「安全に配慮」が実効性なき空約束にすぎないことを、タイヤ落下事故が証明した。危険なつり下げ訓練の廃止を強く要求する。

 米海兵隊は宜野座村城原区、金武町中川区近くでヘリコプターつり下げ訓練を強行し、米軍施設内にタイヤ複数を落下させた。
 昨年12月の集落周辺のオスプレイつり下げ訓練に対し、地元や県は「重大事故の危険がある」と訓練中止を要求していた。それを無視して訓練を再開した直後の落下事故である。
 「タイヤが人に落ちたら死んでいた」という住民の切実な訴えにも耳を貸さず、米軍は訓練継続の方針だ。人命無視も甚だしい。
 米軍は「人道支援・災害救援任務のため訓練は不可欠」と強弁している。「人道支援」と称し、訓練で地元住民に生命・身体の危険を強いるのは矛盾極まりない。
 軍事専門家は「海兵隊は戦闘訓練が99%。人道支援は言い訳にすぎない」と欺瞞(ぎまん)を指摘する。
 米軍が「必要な訓練」と強弁し訓練を続行するのは政府が容認しているからだ。稲田朋美防衛相は事故を受け「安全面に最大限に配慮を求めた」とするが、訓練中止要請への言及は避けた。稲田氏はオスプレイつり下げ訓練の際にも、同様の見解を示していた。
 2006年の読谷村沖の海兵隊ヘリ廃車落下事故で、当時の防衛施設庁次長は「日米安保条約の目的達成に必要」と宙づり輸送を容認し「住民の安全への最大限の配慮」を求めたと述べている。
 落下事故の度に政府は一貫して「安全配慮」を繰り返し、つり下げ訓練を容認する姿勢だ。
 米軍はオスプレイつり下げ訓練でも「施設内飛行」を強弁した。住宅上空など民間地飛行を沖縄防衛局職員も現認しながら、政府は「確認できない」とする答弁書を閣議決定し事実認定を曖昧にした。
 米軍、政府は最低限「民間地区飛行禁止」を明確に確認すべきだ。飛行が施設内か外かを確認する監視システムも不可欠だ。
 周辺住民は度重なる施設外つり下げ訓練、昼夜の騒音被害に苦しんでいる。オスプレイ対応のヘリ着陸帯「ファルコン」の近さが原因だ。ヘリの飛行、つり下げ訓練を施設内に限定しても、わずかにそれただけで被害を被る恐れがある。
 訓練を優先し住民を犠牲にすることは許されない。「ファルコン」の撤去でしか安全は確保されない。