<社説>ニュース女子続編 検証に値せず偏見を助長


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 批判に向き合わず事実の検証を欠いては、公正な報道とは言えない。番組の問題を審議する放送倫理・番組向上委員会(BPO)には改めて厳しい審査を求めたい。

 米軍ヘリパッド建設に抗議する市民をテロリストに例えるなどした東京MXテレビの番組「ニュース女子」の制作会社DHCシアターが「続編」をネット配信した。
 番組の検証をうたいながら、事実を確認すべき当事者取材はおろそかにしたまま、問題のすり替えや意図的な編集など番組の正当化に終始した。
 一例を挙げると、抗議の市民が日当を得ているとの番組内容に関し、「日当をもらった」とする当事者の証言を示し得ず、「知り合いがもらった」など伝聞情報にとどまった。市民が「救急車を止めた」と断定した内容を消防本部が否定したが、安全面を考え「徐行した」ことをことさら強調した。
 手弁当で参加する市民の声を伝えず、抗議行動が過激で交通を妨げる印象を与える編集手法はそのままで、検証の名に値しない。
 「続編」はネット配信のみで東京MXは放送していない。テレビ放送はBPOの審査対象となる。偏った内容との判断が働き、審査の対象とならないネット配信にとどめたのではないか。
 放送倫理のチェックを免れるネット配信で、市民の抗議行動に関する事実誤認や偏見がさらに拡大再生産されかねない。
 BPOは審議入りを決めた際に「明らかに事実の間違いが報じられている。(テレビの)考査の段階で見逃されたことが問題になり得る」との見解を示している。
 にもかかわらず東京MXは先に「事実関係に捏造(ねつぞう)、虚偽があったとは認められず放送法、放送基準に沿った内容」との見解を表明した。制作会社の「続編」も事実誤認を受け入れず、共同歩調で番組の正当性を主張しているのである。
 これを看過してはBPOを中心とする放送界の自律的な規制が揺らぎかねない。公正な報道の基盤がモラルハザード(倫理崩壊)の危機に直面している。放送、メディア界の自浄能力が問われている。
 識者は今回の問題の背景に基地建設に反対する県民を異端視する「沖縄ヘイト」の風潮を指摘する。
 BPOの毅然(きぜん)とした対応とともに放送、新聞などメディア各社にも「沖縄ヘイト」を助長する番組の検証報道を期待したい。