<社説>児童虐待通告最多 貧困対策とセットで対応を


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 2016年中、虐待を受けた疑いがあるとして県警が児童相談所(児相)へ通告した18歳未満の子どもは384人に上り、09年の統計開始以降最多になった。

 児相への通告増は虐待への市民の意識の高まりが背景にあるとみられる。全国でも初めて5万人を突破した。
 虐待は(1)身体的虐待(2)性的虐待(3)ネグレクト(育児放棄)(4)心理的虐待-の四つに分類される。
 県内では今年2月、宜野湾市で生後5カ月の男児に暴行を加えて死亡させたとして母親の交際相手が逮捕されている。子どもたちを虐待の犠牲にさせてはならない。
 児童虐待の防止に向けて発生予防、早期発見・早期対応、保護・自立支援-など切れ目ない総合的な支援が求められる。
 沖縄県の場合、暴言や面前DVなどによる心理的虐待やネグレクトが多いといわれ、経済的な困窮に起因した暴力が指摘されている。貧困対策と虐待防止を併せて取り組む必要がある。
 ネグレクトの場合、ひとり親と子どもの割合が全国より高いこととも関係がある。ひとり親家庭で母親が働きに出て、中には高賃金の夜の仕事を選ばざるを得ず、育児に手が回らなくなる例があるからだ。
 県のひとり親世帯実態調査(2013年度)によると、7割の母子世帯は年間就労収入200万円未満となっている。現在の暮らしについて「大変苦しい」「苦しい」「やや苦しい」が8割を占める。そして母子世帯の3割がしつけに悩んでいる。
 生活が苦しいひとり親世帯には子育て生活支援や、就労支援、養育費の確保、経済支援などの諸施策がある。これらの支援を積極的に活用してほしい。
 さらに児童虐待は社会の負のひずみを映す問題だと捉え、困難を抱える子どもたちを孤立させず、地域みんなで支え合う仕組みづくりが緊急に求められる。
 何より虐待防止の鍵を握る児相の態勢を整えねばならない。専門職を大幅に増やすなど、大胆な防止体制を確立することで、子どもたちに健全な環境を提供し、健やかな成長を保障したい。
 県は、離島の虐待防止対策として今年4月に「中央児童相談所宮古分室」を新設する。分室の役割に期待する。