<社説>嘉手納基地駐機場 騒音、悪臭の原因を絶て


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 米軍嘉手納基地内で1月に施設移転した旧海軍駐機場の再使用が懸念されている。日米両政府は駐機場の廃止を明確に確認し、地元や県に説明すべきだ。

 同基地内の旧海軍駐機場は町屋良地区に近く長年、騒音や悪臭の被害訴えがあった。1996年のSACO(日米特別行動委員会)で移設が合意されながら20年も要し、基地内中央部への移転が1月に完了した。
 ところが2月以降も、旧駐機場へのKC135空中給油機、特殊任務機C146Aの駐機が確認されている。これに対し地元自治体、住民は強く反発し、同町・沖縄市・北谷町の「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」が沖縄防衛局、在沖米総領事に抗議し、地元議会も即座に抗議決議を可決した。
 旧駐機場の使用はSACO合意に明確に反し、断じて容認できない。今月に入り、稲田朋美防衛相は衆院安全保障委員会で「大変遺憾だ。SACO合意を守るよう強く要請したい」と述べた。
 在沖米軍機の夜間飛行は「運用上必要な場合に制限される」としているため、恣意(しい)的に解釈されている。旧駐機場も恣意的な運用が危惧される。政府はSACO合意厳守の確約を米軍から取り付けてもらいたい。
 駐機場の移設により騒音被害は一定程度、軽減されるかもしれない。しかし問題解決には程遠い。
 嘉手納基地から発生する悪臭の実態調査で北海道大学の松井利仁教授は、基地内の滑走路の南側や旧海軍駐機場に悪臭の発生源があると推定されるとの調査結果をまとめた。
 駐機場が移転した1月以降、発がん性物質を含む可能性がある黒色粒子の量と臭気レベルがそれ以前より減少し、黒色粒子の数は大幅に減少したという。騒音レベルの上昇とともに黒色粒子の増加が顕著であることも判明した。
 駐機場が遠のいても黒色粒子の発生は続く。詳しい成分分析、発がん性など健康被害の医学的な解明が必要だ。
 今回の調査は嘉手納基地に隣接する一地点で行われたが、松井教授は「複数地点の同時測定が必要」としている。基地内の調査も不可欠だろう。政府は米軍に基地内調査を求めるべきだ。
 三市町連絡協議会は嘉手納基地での米軍F35戦闘機の運用中止も求めている。騒音、悪臭の原因となる運用強化は認められない。