<社説>宮古観光事業疑惑 再検証と説明は市の責務


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 宮古島市の観光PR事業委託業者選定を巡る問題で、市議会の調査特別委員会(百条委員会)は「不適切な処理が認められる」との報告書をまとめた。

 県外3社と市職員が刑法の公契約関係競売等妨害罪と官製談合防止法に違反した可能性があるとも、報告書は指摘している。
 百条委では、事業に応募したとされた埼玉県の2社の代表者がともにそれを否定した。3700万円で事業を受託した「宮古島まちづくり研究会」の東京側スタッフA氏から事情を聴くことはできなかった。
 2社の証言や一連の不透明な事業選定に、中心的に関わったとされるA氏に連絡がつかない不可解な状況もある。百条委が法に抵触する可能性を指摘したのは当然だろう。
 市は百条委の報告書を重く受け止めるべきである。だが、下地敏彦市長は「手続きはしっかりされており、職員が談合に関与したとは思えない。再検証は今のところ考えていない」と述べている。
 手続きが適正ならば、再検証することに不都合はないはずだ。真相解明に後ろ向きとも受け取れる姿勢は理解に苦しむ。再考を求めたい。
 「不適切な処理が認められる」と指摘され、談合などの疑いがもたれても不問に付すようなことがあっては、市民の理解は到底得られない。問題を放置すれば、市政への不信が強まることは避けられない。
 市に提出された2社の辞退届は、偽造された疑いが百条委で濃厚になっている。市が悪質な詐欺に遭い、公金3700万円を奪われた可能性さえ疑われる。全ての疑問を払拭(ふっしょく)することが求められていることを、市は受け止めるべきである。危機感を持って再検証し、その結果を市民に丁寧に説明する責務を全うしてもらいたい。
 報告書承認後、百条委の委員から「捜査当局に厳正なる捜査を求める」決議が提起されたが、与党系市議の反対で否決された。
 捜査当局に真相解明を求めることを否定することは、事件化封じに見える。行政のチェック機関である議会が疑惑解明に向けた有効な手段を排除したことは疑問だ。
 真相解明を求める市民の疑念解消のため、役割を発揮することが各議員の務めである。そのことを深く認識してほしい。