<社説>新年度スタート 働く楽しさと手応え知って


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 きょうから新年度が本格スタートする。企業や官庁では新しい顔ぶれが新鮮な風を運ぶだろう。長い社会人生活を“卒業”し、新たな人生に臨む人もいるだろう。それぞれの門出を祝いたい。

 国内外の政治情勢は不安定で、経済成長も見通せない。希望を持ち、置かれた場所で努力することによって飛躍する年度にしたい。
 変わる制度もある。国民年金保険料が段階的に引き上げられ、230円増の月1万6490円となる。公的年金の支給額は物価の下落に合わせて0・1%減る。今春闘では賃上げ水準が前年を下回る企業が多く、家計にはじわりと厳しい春となりそうだ。
 昨年度は広告代理店電通の女性社員が過労自殺したことをきっかけに、働き方が強く問われた年だった。自殺の背景には月100時間を超えた長時間労働と、それを是認する日本型企業風土がある。
 政府は「働き方改革」をまとめた。月100時間未満までの残業を認めるなど長時間労働の是正には程遠い。
 これからの人口減少下では働き方を変えないと人手を確保できないと企業側も気付き始めた。ワークライフバランス(仕事と生活の両立)は企業側の課題である。同時に働く人の意識改革も求められる。仕事の楽しさや成長の手応えを味わいつつ、生活とのバランスを取ってほしい。
 目を転じれば、沖縄にとって試練は続く。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、国は県民の反対を押し切って工事を進める。県が過去に出した、現場海底の地形を変える岩礁破砕の許可は3月末で切れたが、事業者の沖縄防衛局は再申請せず、今月中にも事実上の埋め立てとなる護岸工事を始める予定だ。
 県は沖縄振興計画「沖縄21世紀ビジョン基本計画」の今年度から5年の後期計画に子どもの貧困対策を新たに盛り込んだ。沖縄の子どもの3人に1人が貧困状態に陥っている状況を受け、奨学金制度などを拡充する。子どもの貧困は60年前から指摘された沖縄社会の問題であった。だが、過去の沖縄振興計画では顧みられなかった。子どもや親に対する支援策で貧困の世代間連鎖を断ち切る必要がある。
 取り巻く環境は厳しいが、課題を把握し、対策を講じることで現状を打破し、改善していきたい。