<社説>泡盛出荷12年連続減 海外に販路拡大目指そう


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 泡盛の出荷量が下げ止まらない。県酒造組合によると、2016年は前年比2・9%減の1万8694キロリットル(アルコール度数30度換算)で12年連続の減少となった。

 泡盛は沖縄の食文化を代表する銘酒である。国内市場の縮小が大きく影響している。それなら海外に目を向けて、ブランド化して付加価値を高め販路拡大を目指そう。
 出荷量の内訳は、県内出荷が前年比2・8%減の1万5913キロリットル、県外出荷は同3・4%減の2780キロリットルだった。ピークの04年と比較すると県内出荷は74・2%、県外出荷は44・5%の水準に落ち込んだ。
 県酒造組合は減少の原因について、人口減少や高齢化、若者のアルコール離れなどによる国内の酒類市場の縮小を挙げている。国内市場は1996年をピークに減少している。県内の飲食店や量販店で泡盛だけでなく日本酒や洋酒も扱われるようになり、市場の多様化が進んでいることも影響している。
 では海外はどうか。日本の酒類の輸出額は12年の206億円から16年に429億円と倍増している。日本酒造組合中央会は「本格焼酎・泡盛の輸出基本戦略」(16年3月)を発表し、中国市場を優先して展開すると位置付けている。
 中国人向けインターネットアンケートによると、訪日経験者と未経験者の間には、本格焼酎・泡盛に対する関心度に差がある。訪日客に食中酒としての泡盛の魅力を伝えることで、認知度向上を図ることが可能だという。
 沖縄を訪れた16年の外国人客は前年より約58万人増え、初の200万人台となった。政府は先月、沖縄を訪れる外国人に泡盛の魅力を伝える方針を決定した。日本文化を世界へ発信する「クールジャパン」戦略の一環で、泡盛にとって追い風になる。
 県酒造組合は今回、16年の泡盛総生産量も発表した。出荷が減少する中で、生産量は3・0%増の1万9858キロリットルだった。各酒造所が生産した泡盛の一部を販売ではなく、3年以上熟成させる古酒の商品化に取り組んでいるからだ。日本酒や洋酒と差別化するために古酒は欠かせない。ブランドを確立するためには時間が必要だ。
 世界的な蒸留酒にはマティーニ、モスコー・ミュールなど代表するカクテルがある。泡盛カクテルも広めてほしい。