<社説>障害者地域協ゼロ 共生社会目指し早期設置を


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 2016年4月に施行された障害者差別解消法に基づく「障害者差別解消支援地域協議会」の設置が、県内全ての市町村で実現していないことが琉球新報の調べで分かった。

 地域協議会新設が厳しいなら自立支援協議会など既存の組織を有効活用する方法もある。市町村に対し、何らかの形で早期設立するよう求めたい。同時に、差別解消法を周知徹底するため広報活動も強化すべきだ。
 差別解消法によって法務局や労働局など国の出先機関や教育委員会、医療、警察、弁護士会などが連携する「障害者差別解消支援地域協議会」の設置が規定された。協議会は障がいを理由とした差別解消の取り組みを話し合う。
 法律で義務付けられているわけではないが、地域の実情に応じた取り組みに重要な役割を果たすとして、国は積極的な設置を求めている。内閣府の全国調査によると、今年3月末までに設置を終える市区町村は41%。沖縄県のゼロは突出している。
 琉球新報の調査に対し、設置に向け「具体的な取り組みをしていない」と答えた県内市町村は78%(32市町村)に上る。市町村の既存組織に「障害者差別解消支援地域協議会」の役務を担わせている市町村が7カ所あるものの、差別に関する相談を受けた実績はなく、機能していない。これでは法律施行の意味がない。
 各市町村は協議会の必要性を感じているが、障害者差別解消法や協議会に関する知識が十分ではないようだ。市町村単位で設置するのは、住民に身近であるという特性を生かせるからだ。
 内閣府の「地域協議会設置の手引き」は、協議会設置の利点として、障がい者からの相談がたらい回しになることを防ぎ、関係機関で共有・蓄積した相談事例などを踏まえ、権限ある機関に迅速につなげると説明している。
 さらに、解決に向けた対応力が向上し、職員の事務負担の軽減、障がい者差別の解消に向けて積極的に取り組んでいる地方自治体であることをPRできることなども利点として挙げている。
 全ての人が個性を尊重し合いながら共生する社会に向かうためには、無関心を払拭(ふっしょく)しなければならない。協議会設立だけでなく、法律の理念を私たち一人一人が実践することも求められている。