<社説>共謀罪審議入り 四たび廃案するしかない

 「共謀罪」法案が衆院本会議で審議入りした。日本の刑事法体系の基本原則を否定し、戦前の治安維持法の再来となる危険な法案である。廃案に追い込むしかない。

 共謀罪法案は組織犯罪処罰法改正案として2003年に初めて国会に上程され、09年までに3度廃案となった。それだけ問題が多く、国民の理解が得られなかったからだ。しかし、政府は13年から検討を再開し、ほぼ8年ぶりの国会上程となった。
 法案は「テロ等準備罪」という罪名になった。安倍晋三首相は「東京五輪の開催を控え、テロ対策に万全を期すことは開催国の責務だ」と必要性を強調した。
 そもそも、国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)を批准するために国内法を整備するというのが理由ではなかったか。東京五輪のテロ対策を口実に何でも通してしまおうという意図が見える。
 しかも、この条約はマネーロンダリング(資金洗浄)などの資金対策が中心で、テロ防止とは直接関係がない。日弁連が主張してきたように、関連する多少の法整備をするだけで条約批准は可能であり、対象犯罪数が277にも及ぶ必要はない。日本では現在、既遂、未遂ではなくても罪に問えるものとして陰謀罪8、共謀罪15、予備罪40、準備罪9が既に定められているのである。
 政府は、共謀罪法案を優先して、性犯罪の刑を重くするなど国民の関心が高い刑法改正案の審議を後回しにするという。野党が共謀罪の慎重審議を求めれば刑法改正ができなくなると、刑法改正を「人質」にして共謀罪を早く通そうという狙いだ。しかし、政府がいかに姑息(こそく)な手段をとろうとも、「組織的犯罪集団」と見なすかどうかが捜査機関の恣意(しい)にゆだねられることの重大性は変わらない。
 辺野古の現場では警察や海上保安庁の監視の下で市民が抗議行動をしている。共謀罪ができたらどうなるだろうか。小口幸人弁護士は「捜査機関が恣意的に(共謀罪を)使えるので警戒のしようがない。逮捕するだけなら便利な道具だ」と指摘している。日常的な監視が正当化され、適用の拡大解釈に歯止めをかけることも難しい。
 安倍政権は、国会の多数を頼りに、国民の声に背を向け、憲法違反の法案を次々と強行採決してきた。暴挙を繰り返させないよう、さらに世論を強めたい。