<社説>県内労働法違反77% 働き方の改善を進めよう


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 沖縄労働局が2016年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」の重点監督で県内の対象事業場130のうち、76・9%で法令違反が指摘された。このうち49・2%は違法な時間外・休日労働だ。

 拡大が続く景気判断や有効求人倍率の上昇など沖縄経済は好調が続く。だが一方で課題となっているのが人手不足だ。特に小売りやサービス業、建設業で目立つ。
 これらの業種では新規求人も多い。労働局によると、17年1月の産業別新規求人では、サービス・娯楽、建設、卸売・小売りが増加率の上位を占めている。
 単に人材が不足しているだけなのか。背景に労働環境の悪さ、それに伴う多数の離職者があり、さらには人手不足という悪循環に陥ってはいないか。
 重点監督の結果は、こうした悪循環の可能性を示唆している。労働局によると、時間外労働の過労死ラインとされる月80時間を超える労働者が42人いるホテルでは、このうち12人が月100時間を超えていた。これ以外にも長時間残業の指導例として、小売業やサービス業が挙げられている。
 今回とは別に八重山労働基準監督署が15、16年の2年間に実施した監督指導では、八重山郡内のレンタカー業20事業所の全てと宿泊業31事業場の97%に当たる30カ所で法令違反があった。両業種とも時間外・休日労働の最長時間は200時間を超える。
 労働局は重点監督に当たり、前回(15年)は時間外勤務100時間超を目安としたが、今回は80時間超と、より厳しくした。さらに今回は「若者の『使い捨て』」が疑われる事業場を集中的に対象にしたという。
 県内景気を底支えするのは観光業だが、観光客を相手とするホテル、小売りなどで長時間残業・休日労働が恒常化している実態がある。人手不足は強まるばかりである。足りなければ新たな人に変えるというのなら、まさに「使い捨て」だ。働き方を変えない限り、人手不足の解決は遠のくばかりだ。
 広告大手・電通の新入社員が過労自殺した事件を契機に、労働環境に対する社会の関心は高まっている。人材は企業にとって財産である。使い捨ての駒ではない。好調な県経済を揺らぎないものにするためにも、官民挙げて労働環境の改善に取り組んでもらいたい。