<社説>熊本地震1年 被災地に輝き取り戻そう


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 熊本県で217人、大分県で3人が犠牲になった熊本地震から1年がたった。

 熊本では一時、県民の約1割に当たる18万4千人が避難生活を強いられた。今もみなし仮設住宅で約3万4千人、仮設住宅では約1万1千人の計約4万5千人の被災者が暮らしている。生活再建は途上にある。
 熊本県には3月末現在で義援金約493億9千万円、ふるさと納税約50億6千万円(約2万5千件)が全国から寄せられた。ボランティア参加者は約11万8千人に上る。
 国民の温かい支援は被災者を勇気づけたはずである。復興に取り組む被災地が輝きを取り戻すよう、官民挙げて強力に支援したい。
 同じ地点で震度7を2回記録したのは、気象庁の観測史上初めてである。前震と2日後の本震で熊本の製造業や農業、観光業は大きな打撃を受けた。熊本城の石垣は崩れ、天守閣の屋根瓦が落ちるなど「熊本の宝」も被害を受けた。
 熊本では全壊8667棟、半壊3万3585棟、大分でも全壊9棟、半壊222棟の住宅が被害に遭った。環境省によると、公費での解体を申請・予定する住宅の約4割が解体を終えていない。
 復旧復興関連の公共工事入札で人手不足やコスト上昇で受注業者が決まらず、施設の修復が遅れるケースが相次いでいる。全国の関係業者の協力は不可欠だ。復旧復興工事をさらに後押しする制度の検討を政府に求めたい。
 熊本地震では、発生後の対応で課題が浮き彫りになった。
 被災地の要請を待たずに政府が物資を送る「プッシュ型支援」は一部機能せず、余震への不安などから車で寝泊まりし、エコノミークラス症候群を発症した被災者への行政支援は行き届かなかった。各自治体のボランティアセンター間の調整がうまくいかず、人手不足の場所がある一方で、ボランティアを断るケースもあった。
 数々の教訓を生かし、震災対応を機能させるには、事前の準備と訓練が必要だ。
 沖縄も例外ではない。だが、8市町村が法律で義務付けられた指定避難所を設置せず、18市町村が耐震性に疑問のある建物を避難所に指定するなど、心もとない状況にある。実数・人口当たりで全国最少の「防災士」の育成にも力を入れるなど、危機感を持って震災への備えを万全にしたい。