<社説>朝鮮半島有事対策 優先すべきは非軍事的解決


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 日本政府は朝鮮半島有事に備え、武装難民への対処や韓国在留邦人救出の検討に着手した。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮への圧力を強化するため、トランプ米政権が武力行使を含む「あらゆる選択肢」の検討に入ったためだ。

 しかし、米軍が北朝鮮への攻撃に踏み切れば、米軍基地が集中する沖縄を含め、取り返しの付かない事態になる。日本は国際社会と共に非軍事的解決策を追求し、朝鮮半島非核化に取り組むべきである。
 政府は13日、国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を開催した。会合では、米国による軍事行動で九州から東北地方の日本海側沿岸に船で大量の難民が流入すると想定。その際、救難や受け入れなどの人道的対応に加え、難民を装って北朝鮮軍兵士が上陸し、インフラの破壊やテロに及ぶ可能性があるとして、警備面での態勢強化が課題として上った。やむを得ない場合は、自衛隊の治安出動も想定している。
 ここは冷静に考える必要がある。米軍が北朝鮮に武力行使した場合に難民が発生するのである。
難民が発生しないように、安倍晋三首相はトランプ氏と緊密に意思疎通を図っている関係を生かして、対話への道へ向かわせるべきだ。
 旅行者を含め約6万人と推計される韓国内の邦人救出に関しては、韓国の同意が得られれば自衛隊の航空機や艦船の活用も検討されている。この点も冷静に考える必要がある。自国に外国の軍隊が入ってくるのを認める国があるだろうか。邦人保護のために自衛隊を使う発想ではなく、海上保安庁の巡視船や民間船舶、民間航空機で行うのが筋だ。
 安保関連法を巡っては、朝鮮半島有事を「重要影響事態」と認定すれば米軍の後方支援が可能になる。米軍が武力攻撃を受け「存立危機事態」と判断すれば、自衛隊は集団的自衛権を行使して米艦防護も実施できる。
 だが、日本が攻撃されていないのに集団的自衛権を行使したり、米艦船を防護したりすれば、相手国にとっては日本も敵になる。本来は戦争の当事者ではない日本が戦争に巻き込まれてしまうことになる。そもそも安保関連法は、多くの憲法学者が違憲と指摘している。
 自衛隊が米軍と一体になる事態ではなく、朝鮮半島有事を回避する行動こそ求められている。